紙のスマートフォンも登場? セルロースナノファイバー研究
日本発の材料開発「セルロースナノファイバー」
私たちのまわりにはたくさんの「植物繊維」があります。例えば、紙は木や古紙などから得られるパルプで作りますが、その主成分であるセルロース繊維は髪の毛程度の太さ(数十マイクロメートル)です。実は、このセルロース繊維はナノレベルの微細な繊維(幅4~15ナノメートル)であるセルロースナノファイバー(CNF)の集合体なのです。
CNFは、化学的な前処理方法と、繊維をほぐして取り出す研究などの画期的な精製手法が、2000年頃から世界に先駆けて日本から発信され始め、その後、材料開発が活発になりました。
「透明」だけじゃない、ナノペーパーの実力
このCNFで作ったナノペーパーは、「透明」です。そもそもセルロース繊維は透明ですが、普通の紙は繊維間の数マイクロメートルの隙間で光が散乱し「白く」見えています。しかしナノペーパーはこの隙間が可視光の波長よりも小さくなるので、光が乱反射せず高い透明度を示すというわけです。
また、透明であるだけでなく、ナノペーパーには高い強度・耐熱性・耐薬品性・誘電率・絶縁性、そして自然環境で微生物などに分解される性質(生分解性)など多くの特性があります。これらを生かして電子デバイス部品の基板やアンテナ、メモリ、タッチパネルなどのパーツが開発されており、「ペーパースマートフォン」など未来のものづくりの可能性が広がります。
「情報を持ち運びやすくしたい」という欲求
人間は昔からいろいろなものに情報を記録してきました。最古は壁などの動かないもの、次に粘土板や石板、続いてパピルスや羊皮紙、木や竹、そして紙です。印刷技術の発明によって紙が記録媒体の中心になり、現代ではタブレットPCなどが台頭しています。
この進歩の根底にあるのは「いかに情報を持ち運びやすくするか」という欲求です。次に来るのはナノペーパーでしょう。樹木をはじめとする植物資源は日本には豊富にあり、何より環境負荷が低いことからみても、これは必然と言えるのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 産業科学研究所 第2研究部門(材料・ビーム科学系)自然材料機能化研究分野 教授 能木 雅也 先生
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