効率良い配送ルート計画を「数理最適化(組合せ最適化)」でサポート
物流業界の人手不足を解決できる?
オンラインショップの利用による配送需要の増加のため、物流業界の人手が不足しています。例えば、宅配便のドライバーは毎日、大量の荷物を担当地域のさまざまな顧客に配送しますが、道路の混雑状況や駐車場所の空きなどを考慮した、効率良い配送ルートを計画するには十分な経験が必要です。そこで、経験の少ない新人ドライバーでも円滑な配送業務ができるように、配送ルートの計画を支援するシステムを開発する研究が進められています。
「数理最適化」で配送ルートを計画する
配送ルートの計画に役立つのが「数理最適化」の手法です。配送拠点から出発し、すべての顧客を回って最後に配送拠点に戻るルートを求める問題は「巡回セールスマン問題」に定式化できます。数理最適化では、いったん適当なルートを構築した後に、ルートを少し変形する操作を繰り返し、効率良いルートを探索する手法が知られています。例えば、配送拠点から始めて最も近い未訪問の顧客を次に訪問する手続きを繰り返すと、最後に訪問する顧客が配送拠点から遠くなってしまいます。そこで、ルートが途中で交差している部分をつなぎ変える、顧客の訪問順を入れ替える操作などを繰り返して、より効率良いルートを探索します。
学問と実務との違い
数理最適化を用いて効率良いルートを計画できたとしても、現場に導入すると計画通りに運用できないことがあります。顧客が不在であれば再配達の必要が生じますし、道路の渋滞や駐車場所の不足などデータには現れない実務上の問題が生じることは少なくありません。ほかにも、可能なルートの組合せの数が膨大で効率良いルートを短時間で探索できない学問上の困難さも挙げられます。現場の運用から生じる制約は業界や企業で異なるため、そのたびに、アルゴリズムを一から開発・検証していたら、どれだけ時間があっても足りません。数理最適化を実務に生かすためには、さまざまな状況や制約の下で利用できる汎用性の高いアルゴリズムの開発を進める必要もあります。
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大阪大学 大学院情報科学研究科 招へい教授 梅谷 俊治 先生
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