超音波を利用した小さな泡(マイクロバブル)が秘めた大きな可能性
目に見えないほど小さな泡
100μm(マイクロメートル)以下の目に見えないほど小さな気泡、「マイクロバブル」。その特性は、浮上速度が遅いので液体内に滞留する時間が長いこと、非常に小さく数が多いので周囲の液体と触れる面積が大きいこと、泡の表面から内側に大きな圧力が働くことなどです。この特性を利用して、液体に気体をより多く溶かし込むことが可能になるほか、さまざまな分野への応用が研究されています。そこで最近注目されているのが、超音波を利用したマイクロバブル発生装置です。
超音波を用いたマイクロバブル発生法
この装置は、超音波で振動するユニットにラッパを逆さまにつなげたような形状で、ここに気体を吹き込むことでマイクロバブルを発生させます。この装置には、有機溶媒や液化した金属、粘度の高い液体など、水以外の液体中にも、気化したさまざまな物質をマイクロバブルとして大量に発生させられるという利点があります。これは日本独自の技術です。
バブルにしたい物質の中には、瞬間接着剤の成分であるシアノアクリレートのように、水に触れるとすぐに固まるものもあります。従来の方法ではバブルになる前に固まってしまいますが、超音波による発生装置では、シアノアクリレートの蒸気をマイクロバブルとして水に通すことで、微細な中空のカプセルを生成できるのです。
可能性が広がるマイクロバブル
マイクロバブルは、幅広い分野への応用研究が進められています。例えば、次世代の超音波造影剤の開発です。これは「倍音」をよく反射するというマイクロバブルの音響特性を活用するもので、従来は超音波での検査が難しいとされてきた血流の様子を観察することが可能になります。また体内のがん細胞にピンポイントに薬を届けるドラッグデリバリーシステムなど、医療分野での応用に大きな期待が寄せられています。
さらに、オゾンのマイクロバブルによる殺菌効果を利用した植物工場用の殺菌や、福祉の分野で期待される洗浄効果を持つバブルバスなど、その可能性はますます広がっています。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 機械システム工学科 教授 幕田 寿典 先生
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