微生物の特殊能力を、人間のために活用する
地球の生物の大半が微生物
地球に生命が誕生して何億年も経っていますが、現在生き残っている生物は進化の過程でさまざまな困難を乗り越えてきた精鋭たちです。生物といってすぐに思い浮かぶのは、動物や植物だと思いますが、地球上で生きている生物の種類では、微生物が大半を占めています。
特殊能力を持っている微生物
微生物が生きているのは、ほとんどが土の中です。動物や植物が死ねば、微生物はそれを分解することで栄養を得ています。ほかの生物が食べられないようなものを栄養とすることで生きているのです。低温の場所や高温の火山の噴火口で生きている微生物もいます。特別な環境に応じて、特殊なものを食べる独自の能力を身につけることで生き残っているのです。
土の中で微生物は生存競争を繰り広げています。いかに早く周りにある栄養を獲得するかを争っているのです。中には、栄養源を吸収する速度は遅いけれども、周りの微生物にとっては毒になるような物質を放出して、自分だけがゆっくりと栄養を得るという戦略で生き残っている微生物もいます。この毒が抗生物質として多くの感染症治療に応用されています。このように、さまざまな能力を持った微生物がいるので、その特殊能力を利用して人間の生活や産業に役立たせる研究が行われています。
石油の代わりになる微生物?
人間は、植物の細胞壁をつくっているセルロースを食べることはできません。しかし、セルロースはデンプンと同じブドウ糖からできています。そのためセルロースを分解すればブドウ糖になります。稲わらのセルロースからブドウ糖ができますが、いくらブドウ糖でも、その溶液を飲むのは無理です。
そこで、そのブドウ糖をさらに酵母という微生物に食べさせればエタノールに変わります。エタノールにすれば、石油の代わりにすることができます。光合成によって植物がつくった物質を利用して、エネルギー源や化学製品の原料として活用が可能になるのです。小さな微生物は、現在は石油に依存している世の中を、大きく変える可能性を秘めているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 農学部 生命機能化学科 准教授 炭谷 順一 先生
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