「方言」からたどる、日本語の奥深さ

「方言」からたどる、日本語の奥深さ

共通語にはない方言の豊かさ

日本各地には方言があります。しかし、方言は単に古くさい言葉や言い回しではありません。方言には共通語にない意味や使い分けがあり、共通語にはないニュアンスを表現することができるのです。かつては、方言はなるべく表に出さない方がいいという風潮がありました。しかし今は逆に方言が地域をアピールする有効なアイテムになってきています。方言はアイデンティティを確認する重要な手段なのです。また、現代の若者は、SNSで方言をアクセサリーのように散りばめたり、よく知られた方言の言い回しをまねたりしながら会話を演出しています。

方言のルーツは古語にもある

方言の語源はさまざまですが、かつて都で使われていた古語が地方の方言として残っていることがあります。例えば熊本県の「あとぜき」というのは「開けたら閉める」という意味ですが、これは「せき止める」という意味の「せく」という古語に由来します。「開いた空間を閉じる」から、「あとぜき」というのです。一時期流行した「じぇじぇじぇ」という言葉も、もともと室町時代には京都で使われていた、驚いた時に使う「じゃ」という言葉が変化したものです。岩手県の内陸部では「じゃ」もしくは「じゃじゃじゃ」と言いますが、それが変化して沿岸部では「じぇ」「じぇじぇじぇ」という言葉として残りました。また中国地方では、壊れることを「やぶれる」と言う地域がありますが、「やぶれる」という言葉のこのような使い方は平安時代にすでにありました。古い意味が方言として残ったということです。

方言から日本語そのものを考える

方言を研究するということは、日本語の歴史の解明や日本語の構造を分析するヒントを与えてくれます。方言の音声・文法の特徴や意味範囲の分析を通して、日本語の研究そのものを深めていくことになるのです。方言だと気づかずに使われている言葉もたくさんありますし、いまなお新しい方言も発見されています。方言を研究することで、言葉の変化や変容をとらえるきっかけが生まれるのです。

参考資料

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東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授 篠崎 晃一 先生

東京女子大学現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授篠崎 晃一 先生

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日本語学、社会言語学、方言学

メッセージ

日本語は1つではありません。性別や世代による違いがあります。個人の中でも場面によって言葉を使い分けています。また、地域によってもさまざまな違いがあります。中には共通語では言い表せないものもあり、日本語には豊かなバリエーションがあるということを、まずは知ってください。
そして言葉に限らず、自分自身の国の文化や歴史について海外の人に説明できるようになってください。そのようなことがこれからグローバル化する現代を生きる上でも重要になってくるのです。

先生への質問

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東京女子大学はキリスト教精神に基づくリベラルアーツ大学です。現代教養学部に、人文系、社会科学系、理系にわたる6学科を擁し、全ての学生がワンキャンパスで学んでいます。専門の学びを深める中で、自らの立てた問を追求していくために、学問分野や学科を超えて学び、複合的な観点で物事の本質を捉える力を身につけます。2025年度からの学科再編により、経営・観光・環境分野を含む経済経営学科や、公認心理師資格に対応した心理学科、社会学・メディア情報・共生社会を幅広く学べる社会コミュニケーション学科が新設されました。