「自衛(=自分の国を守る)」の権利はどこまで及ぶのか?
テロ組織に対する国家の武力行使は違法?
国際社会は、いま、武力紛争や人権侵害、貧困などのさまざまな国際問題に直面しています。近年、「イスラム国(IS)」のように国境を越えたテロリズムが多発し、それに対する国家による武力行使も増えています。国際連合憲章は国連加盟国の自衛権を認めており、国家が武力攻撃を受けた場合、自衛権に基づいて反撃を正当化することができます。しかし、自衛権は「国家間」で成立するもので、テロ組織のような「非国家主体」に対する国家の自衛権行使が合法であるかどうかは議論があります。国家の武力行使が合法(違法)かどうかを判断する際のルールとなるのが、国際法です。
国際法の2つの成立形式
国際法は国家間の関係を規律する法です。民法や刑法といった国内法が、議会や国会で成立するのに対して、世界をまたぐ立法機関のない国際社会では、国家の意思や実行を通して国際法が作られます。国際法の形式は、国家間の合意に基づく「条約」と、ある国家の行動にほかの多くの国家が支持して実践することで、国際的な慣習として認められた「慣習国際法」があります。前述したテロリズムへの武力行使を例に挙げると、非国家主体に対する国家の自衛権行使は、条約である国連憲章では明確に合法とは言えないにもかかわらず、多くの国がテロリストへの自衛権行使を支持して実行が積み重なる場合、慣習国際法として認められる可能性もあるのです。
「やられたらやり返す」連鎖を防ぐために
現在、テロリズムに対しては、自衛権の名の下に武力行使が当然のように行われています。このままでは「やられたらやり返す」の紛争が連鎖しかねません。何より、日本も集団的自衛権を保有しており、他国であるが「日本と密接な関係」にあるアメリカに対する武力攻撃に対しても無関心ではいられません。各国の政策に合わせて自衛権を解釈するのではなく、国際法の観点から、「いつ」「どのような」武力行使であれば合法な自衛権行使となるのかを突きつめていくことが、この研究分野に求められています。
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東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 国際関係専攻 准教授 根本 和幸 先生
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