交通で、人々の幸せを高められるか?
運賃は目に見えない「価値」の換算
人が移動に利用するバスや電車、新幹線や航空機といった乗り物や高速道路などは、いずれも運賃の支払いが必要です。この運賃は、どのようにして決められているのでしょうか。どのくらいの金額が望ましいのでしょうか。そもそも運賃水準や体系を決めるには、一体どうすればいいのでしょうか。パンやお菓子など、「物」に値段をつけるのとは違い、交通は目に見えません。「乗る価値」や「利用する価値」を考えて運賃を考えなければならないのです。適切な運賃を決めるために一つ大切なことは、交通に一定の資源を使う以上、それらから得られる交通社会の幸せを最大にすることです。
幸せな交通社会とは?
人々にとっての幸せな交通社会とは、具体的にどういう社会でしょうか? 例えばいつも渋滞が起こって、騒音や排ガスなど、周辺環境への悪影響が問題となっている有料道路があるとします。その場合は料金を高くし、車の利用を抑えたり、他のルートへ誘導して車の流れを分散させるという対策が考えられます。
また近年、LCC(格安航空会社)の登場により、利用者が運賃やサービスを選べるようになりました。以前は、厳しい国の規制の下での大手航空会社しかなく、LCCはありませんでした。そのため競争が起こらず、運賃額は高いままでほぼ固定されていました。しかし研究が進むにつれ、LCCの存在が社会経済に有益であるとわかり、国もLCCの参入を推奨しました。
未来の交通のあり方
高速道路網や新幹線などのインフラが発達した日本の課題は、今後、これらの交通資源をどうやってうまく使っていくかです。環境に配慮しながら、経済活動に重要なインフラを活用していかなければなりません。同時に過疎地域に住む人の交通の便の確保も大切です。インフラの維持更新やその費用負担のあり方などを考える上では、さまざまなデータ分析も進めて政策を提案していく必要があります。未来においても、交通を利用することから得られる社会の幸福を大きくすることを考え続けなければならないのです。
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東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 経済学専攻 教授 竹内 健蔵 先生
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