講義No.11774 経済学

交通で、人々の幸せを高められるか?

交通で、人々の幸せを高められるか?

運賃は目に見えない「価値」の換算

人が移動に利用するバスや電車、新幹線や航空機といった乗り物や高速道路などは、いずれも運賃の支払いが必要です。この運賃は、どのようにして決められているのでしょうか。どのくらいの金額が望ましいのでしょうか。そもそも運賃水準や体系を決めるには、一体どうすればいいのでしょうか。パンやお菓子など、「物」に値段をつけるのとは違い、交通は目に見えません。「乗る価値」や「利用する価値」を考えて運賃を考えなければならないのです。適切な運賃を決めるために一つ大切なことは、交通に一定の資源を使う以上、それらから得られる交通社会の幸せを最大にすることです。

幸せな交通社会とは?

人々にとっての幸せな交通社会とは、具体的にどういう社会でしょうか? 例えばいつも渋滞が起こって、騒音や排ガスなど、周辺環境への悪影響が問題となっている有料道路があるとします。その場合は料金を高くし、車の利用を抑えたり、他のルートへ誘導して車の流れを分散させるという対策が考えられます。
また近年、LCC(格安航空会社)の登場により、利用者が運賃やサービスを選べるようになりました。以前は、厳しい国の規制の下での大手航空会社しかなく、LCCはありませんでした。そのため競争が起こらず、運賃額は高いままでほぼ固定されていました。しかし研究が進むにつれ、LCCの存在が社会経済に有益であるとわかり、国もLCCの参入を推奨しました。

未来の交通のあり方

高速道路網や新幹線などのインフラが発達した日本の課題は、今後、これらの交通資源をどうやってうまく使っていくかです。環境に配慮しながら、経済活動に重要なインフラを活用していかなければなりません。同時に過疎地域に住む人の交通の便の確保も大切です。インフラの維持更新やその費用負担のあり方などを考える上では、さまざまなデータ分析も進めて政策を提案していく必要があります。未来においても、交通を利用することから得られる社会の幸福を大きくすることを考え続けなければならないのです。

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東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 経済学専攻 教授 竹内 健蔵 先生

東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 経済学専攻 教授 竹内 健蔵 先生

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交通経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

経済学はお金の学問ではありません。経済学とは、社会の幸せを考える学問です。交通経済学のほかにも医療経済学や労働経済学といった分野がありますが、それらも医療や労働における社会の幸福を大きくするための学問です。世の中を良くするために、ぜひ世界を救うウルトラマンのような熱い気持ちをもって、経済学を学びに来てください。
そこで忘れてはならないのが、「温かい心と冷静な頭脳」です。決して感情に流されず、冷静に、客観的に事実を分析する頭脳と、行動力が大切です。

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東京女子大学はキリスト教精神に基づくリベラルアーツ大学です。現代教養学部に、人文系、社会科学系、理系にわたる6学科を擁し、全ての学生がワンキャンパスで学んでいます。専門の学びを深める中で、自らの立てた問を追求していくために、学問分野や学科を超えて学び、複合的な観点で物事の本質を捉える力を身につけます。2025年度からの学科再編により、経営・観光・環境分野を含む経済経営学科や、公認心理師資格に対応した心理学科、社会学・メディア情報・共生社会を幅広く学べる社会コミュニケーション学科が新設されました。