講義No.09469 日本語学

語彙が多いのはなぜ? 日本語を豊かにした「ひねり」と「かさね」

語彙が多いのはなぜ? 日本語を豊かにした「ひねり」と「かさね」

日本文化にはオリジナルが少ない?

日本文化とされるもののルーツをたどってみると、中国や韓国などの外国文化にたどりつきます。日本でゼロから生まれた文化はそれほど多くありません。歴史的に見ると、日本人は基となった外国文化に「ひねり」を加えていくことで日本文化を発展させてきたことがわかります。また、日本では新旧や国を問わず、多くの文化が共存しています。こうした「かさね」という重層性も、日本文化の特徴のひとつです。

日本語に生き続ける「ひねり」と「かさね」

日本語にも、「ひねり」と「かさね」が生きています。例えば、ひらがなやカタカナは中国由来の漢字にひねりを加え、早く楽に書けるようにしたものです。また、日本人は用途によって文字を区別して、数種類の文字をかさねて使い続けています。
語彙(ごい)にも同じことがいえます。日常生活に必要な日本語の語彙は10,000語程度とされていて、ほかの言語と比べてとても多いのです。外来語の「ホテル」を漢語で「旅館」ということもあれば、和語で「やど」ということもあるように、日本語では同じ対象を複数の語彙で表現することができます。これは、さまざまな言葉を吸収し、受け入れてきた結果です。

「すぐに」と「すみやかに」の違い

新横浜駅の新幹線ホームで「停車後、すみやかに発車いたします。」というアナウンスが流れてきました。この「すみやかに」という言葉、「すぐに」と意味は似ていますが少し硬い感じがします。いったい、こういった言葉はいつからあったのでしょうか。例えば『源氏物語』や『枕草子』など、女性の書いた古文の作品を読んでみると、「とく」という古語がこの意味に相当することがわかります。しかし、同じ平安時代でも、漢文を読んでいた男性たちの書物には、「すみやかに」という言葉が出てきます。現代に生きる私たちの日本語も、共通語一つではなく、方言、女性語、若者語というように複数の言葉があるのと同じく、昔の日本語も貴族女性の言葉一つではなかったはずで、多様であったことがわかります。

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東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授 山本 真吾 先生

東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授 山本 真吾 先生

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日本語学

メッセージ

「日本語」は、当たり前のように使っている空気のようなものです。しかし、立ち止まって考えてみると、そう簡単に説明できるものではないことに気づくでしょう。言葉には奥行きがあり、時代や状況によって変化していきます。そのため、言葉について考えるときは、背景にある文化や歴史を知ることがとても大切です。
大学では、当たり前だと思われてきたものを疑ってみることで、ものごとを深いところまで考える力が身につきます。あなたの身の回りを丁寧に観察していく材料として、昔の日本語を選んでもらえるとうれしいです。

先生への質問

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東京女子大学に関心を持ったあなたは

東京女子大学現代教養学部は、全学的に国際性、女性の視点、実践的学びを重視した教育を展開しています。100周年を迎えた2018年に「国際英語学科」「心理・コミュニケーション学科」を新設。また、国際社会学科に新たに「コミュニティ構想専攻」を設置しました。キリスト教精神に基づくリベラル・アーツ教育で自ら考え、知識や能力を行動へとつなげ、社会に出てからも学び続け、さまざまな問題を解決する力を身につけたリーディングウーマンを育成します。