「言葉の地層」を掘ってみる! 深層に眠る日本語の歴史とヒミツ

言葉の地層から見える日本語の歴史
日本語の語彙(ごい)は、まるで地層のように時代ごとの言葉が積み重なってできています。最も古い層には「美しい」などの大和言葉(和語)があり、その上に3世紀ごろから漢語の層が重なりました。言葉のデータベース「日本語歴史コーパス」で調べると、万葉集では和語が99%以上を占めていますが、源氏物語では漢語が約9%、鎌倉時代には30%近くに増えています。明治時代には西洋の概念が漢語で訳されて「哲学」「電話」などとして取り入れられましたが、やがて「パン」「ジュース」といった外来語はカタカナで表すようになりました。語彙の変遷をデータでたどると、日本語の成り立ちがはっきりと見えてきます。
わかりにくいカタカナ語
カタカナ語が理解しにくいのは、言葉の層が浅く、まだ十分に定着していないからです。医療現場の「インフォームドコンセント」もその一つです。こうした言葉は古い層の言葉に置き換えて、例えば「納得診療」と言い換えれば、私たちになじみのある漢語となり、理解しやすくなります。日本語は、大和言葉や長く使われてきた漢語にするほど伝わりやすいのです。
言葉の層を掘り下げて、よりわかりやすい表現を選ぶことは、医療現場などのコミュニケーション改善にも役立ちます。コロナ禍で登場した「オーバーシュート」「エアロゾル感染」なども、浅い層の言葉でわかりにくく混乱を招きました。より深い層にある表現に言い換える工夫が必要だったのです。
言葉の分析力で未来を開く
言葉の「地層」を理解して分析する力は、現実の課題を解決するヒントになります。医療の現場では、専門用語の言い換えをすることで患者との相互理解が深まりました。社会には「伝わらない」ことで起きる誤解やすれ違いが多く、「やさしい日本語」に直すだけで解決することもあります。例えば災害時や外国人との対話など、言葉の使い方一つで状況が大きく変わる場面もあります。言葉を深く知ることは、人と人とをつなぐ力を育てるのです。
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