旅をすると世界が変わる! 観光とSDGs(持続可能な開発目標)
幅広く奥深い「観光学」という領域
「観光」という学問には、特定の分野に収まらない幅広さと奥深さがあります。まず、観光産業に関する経済・経営・金融の実態を知らなくてはいけません。観光に関わる法律や条例は多岐にわたり、国をまたぐことも多いので国際法もおろそかにはできません。地理・歴史・文化、そして語学の力も必須です。さらに、動物性の食物を食べない「ヴィーガン」、イスラム教で許されているものだけを食べる「ハラル」などの生活様式と、それらの根底にある哲学や宗教への理解も欠かせません。観光学とは、これらをバランスよく学び、観光の効果を拡げ、その際に生じる問題の解決策を導き出す学問と言っていいでしょう。
SDGsの視点から観光を見る
観光に関わる今日的な課題の1つに、SDGs(持続可能な開発目標)があります。本来、旅はかけがえのない価値を生み、人生を豊かにしてくれるものです。異なる文化への理解、交流、癒し、歴史や伝統、自然への敬愛、地域経済活性化など、旅が与えてくれる価値ははかり知れません。一方、旅に欠かせない飛行機や自動車などは、CO₂を排出することから地球温暖化の原因の1つと指摘されています。また、観光客によって貴重な自然が破壊される例も少なくありません。こうした現実から目を背けず、より良い観光の未来をつくることも、観光学の重要なテーマです。
世界をより良く変えるために
SDGsの17の目標のうち、例えば(8)は「すべての人に対する安定した働きがいのある雇用」を掲げています。観光産業は、特に女性や若者の雇用を創出し、働きがいのある業種として発展する潜在的な力を持っています。また、(12)は「持続可能な消費と生産のパターンの確保」です。観光産業の正しい発展は、食文化や文化財、伝統産業などを重要な観光資源として守り育てることにつながります。観光が、SDGsの目標の達成にコミットすることで、旅をすればするほど、より良い世界の実現に貢献できるのです。そのためにも、観光学のさらなる発展が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 コミュニティ構想専攻 教授 矢ケ崎 紀子 先生
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観光学先生が目指すSDGs
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