講義No.09336 機械工学

意外と知らない鉄道車両の仕組み

意外と知らない鉄道車両の仕組み

鉄道車両がカーブを曲がるのはなぜ?

鉄道車両は身近な「機械」ですが、その仕組みについては意外と知らない人が多いようです。例えば、鉄道車両には自動車のように車輪の向きを変えるハンドルがありませんが、なぜカーブを通過できるのでしょう?
実は鉄道車両の車輪は、紙コップのような円錐形を輪切りにした形になっていて、外側の半径が小さくなっています。また、左右の車輪は1本の車軸でつながっており一体で回転します。この左右車輪と車軸のセットを輪軸と呼びますが、輪軸がカーブにさしかかると外側のレールを走る車輪は、内側の車輪より半径の大きいところでレールと接触します。このとき左右の車輪は一体で回っているため、外側車輪のほうが速く進み、輪軸は曲線に沿って自然に向きを変え、スムーズにカーブを走行することができます。もし車輪が円筒形なら脱線してしまいます。

鉄道の車輪は効率がいい

鉄道では車輪もレールも鉄でできています。この組み合わせにより、ゴムタイヤのような変形しやすい車輪に比べ少ないエネルギーで重いものを運べます。新幹線で1つの車軸にかかる重さは12トン程度で、1車両では50トン近くの重さがレールにかかることになりますが、そのような大きな重量のものを高速で遠くまで運ぶことはゴムタイヤでは困難です。
ただ、鉄どうしの接触はスリップしやすいという欠点もあります。そのため、自動車に比べると加速や減速は緩やかにしなければなりません。

騒音や振動を制御する

騒音や振動は鉄道にとっては大きな問題です。新幹線は、1つの車両の全長が約25メートルで、車体を2つの台車で支えて走っています。細長いものを長い間隔で支える構造なので、実は車体はたわんだりねじれたりしながら走っています。変形しながら揺れることを弾性振動といい、これが不快な振動や騒音の原因となります。弾性振動は車体の材料と構造によっても変わるため、それらをうまく選んで設計したり、台車との組み合わせや内装材などの特性も利用したりしながら、振動と騒音の問題を解決しているのです。

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秋田県立大学 システム科学技術学部 機械工学科 教授 富岡 隆弘 先生

秋田県立大学 システム科学技術学部 機械工学科 教授 富岡 隆弘 先生

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メッセージ

あなたは鉄道車両にどんなイメージを持っていますか。鉄道車両も自動車や飛行機、あるいはいろいろなモノを作る機械と同じように、機械工学の技術の塊です。鉄道車両を設計したい、動作メカニズムを知りたい場合は機械工学科に進むのが近道です。
私は今、大学にいますが、最近まで20年以上鉄道の研究所で、鉄道車両の研究に携わってきました。その経験をもとに研究や講義を行っています。鉄道車両に興味があるなら、ぜひ秋田県立大学の機械工学科をめざしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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秋田県立大学に関心を持ったあなたは

秋田県立大学は、最先端の設備と全国トップクラスの少人数教育体制など、入学から卒業まで着実に成長できる環境が整っています。中でも「学生自主研究制度」は、入学後すぐに研究に取り組める制度です。学生が主役のこの制度は、自ら研究テーマを決定し、指導教員がアドバイスを行い、実験スペースや機材、そして研究資金を交付して学生をバックアップします。秋田県立大学は、新しい知識を得ながら、知的好奇心を満たす無限のフィールド、学生が主役になれる大学です。