変わりゆく森林の姿をデータで表す「森林モニタリング」
イースター島の文明の衰退
イースター島といえば、草原に巨大なモアイ像が立ち並ぶ姿をイメージするでしょう。この島に文明が栄えた西暦400~500年頃は、島全体が豊かな森林に覆われていました。しかし漁業用の丸木舟を作るために木の伐採を続けた結果、島の森林はほぼ消滅し、それとともに文明は滅びていったのです。はたしてこれは極端な例で、私たちの暮らしには関係ないと言い切れるでしょうか。
森林モニタリング
国際的には1990年代頃から「森林モニタリング」の必要性が唱えられ始めました。当初、国内の動きは活発でなかったものの、2000年代になると気候変動が顕著になり、環境省が主導する森林モニタリングプロジェクトがスタートしています。現在は、数百年単位で状況を考えなければならない森林の、ほんの20~30年分のデータがたまってきた段階です。
モニタリングにはさまざまな手法があります。昔ながらの方法は、1本1本の木にタグをつけて、幹の太さなどを人力で測定する方法です。一方で、新たにレーザースキャニングの技術を使った測定も行われています。レーザー光線を森の上や中から四方八方に照射して、反射スペクトルを解析することで、パソコン上に森林を再現するものです。しかし、この方法を繰り返して森林の状態の変化を調べようとすると、木が少し傾いただけでも同一個体の特定が難しくなるなど、欠点もあります。さらに、人力で測ったデータとレーザースキャニングによるデータを一致させるのは非常に困難です。そのため、長期観測を通して森林の変化を記述するには、昔からのデータと最新の方法で取得したデータを適切に統合することが課題になってくるでしょう。
小さな数字から大きな変化を考える
ひと抱えもある巨木の幹の太さを測ると、4年間で幹周り2~3ミリ程度の成長です。数字だけ見ればほんのわずかだと思うかもしれません。しかし、森林全体、国土全体を考え、さらに文明や地球の動きという大きな期間に換算すると、それは見過ごすことのできない数字なのです。
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秋田県立大学 生物資源科学部 生物環境科学科 教授 星崎 和彦 先生
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