遺伝子の個人差を特定できれば医療が変わる!
人にはどうして個人差があるのか
人には姿かたちや能力などに個人差があり、その違いは親からの遺伝によることが知られています。最近では、ゲノム(遺伝情報全体)の解読技術が進み、個人差の仕組みが詳しくわかってきました。人には約30億塩基対のゲノムがあり、そのうち1000塩基に1つの割合で個人差があるといわれています。全部合わせると300万~400万カ所に違いが見られるわけです。これがもし2カ所の違いだけなら人間は2×2で4タイプしかないことになりますが、300万カ所だと、2の300万乗という果てしない数のタイプができることになります。つまり、人の個性のバリエーションは限りないのです。実際は、このゲノムを両親から1人あたり2セット受け継ぐため、さらに多様になります。
遺伝子情報による先制医療
現在は遺伝子の型をいろいろな集団で調べる研究が積み重なり、遺伝子と個人差の関係がわかってきました。また、遺伝子検査によって遺伝子の型を調べることで、自分の体質やかかりやすい病気を知ることができるようになってきています。
糖尿病や高血圧などは環境要因と遺伝的要因が合わさって発病する「多因子性疾患」です。遺伝要因が特定できれば、当てはまる人は環境要因を取り除くことで発病が防げます。今後めざしていく先制医療とは、病気になる前にリスクのある人を見つけて予防医療を行うことです。リスクがある人は生活習慣の改善や、予防薬の投与により病気を防ぐことができます。
その人に合わせた薬の使用
薬の効き方にも個人差があり、これも遺伝子の型が関係しています。個人の遺伝子の型がわかれば、その人に合わせて薬を選択したり服薬量を調整したりすることが可能です。薬を代謝する機能が弱い体質の人は副作用が起こりやすい傾向にあるので、量を減らすことで危険を防ぐことができます。治療の効果が上がるだけでなく、医療費を抑えるというメリットも超高齢社会では重要となるでしょう。また、難病といわれる病気の治療法発見にも遺伝子の型の特定が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
明治薬科大学 薬学部 生命創薬科学科 教授 紀 嘉浩 先生
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