便利さの裏に潜む、環境化学物質が及ぼす影響を大追跡!
内分泌をかく乱する環境化学物質
私たちの身の回りには、燃えにくいカーテンや焦げ付かないフライパン、使い勝手のよいプラスチックやビニール製品など、便利な品がたくさんあります。しかし同時に、これらの製品に使われた化学物質は環境中に放出されます(環境化学物質)。中にはアレルギーを引き起こしたり、ホルモンに似た構造のため偽ホルモンとして内分泌系をかく乱したりする物質も含まれています。このような化学物質に高レベルでさらされた動物実験などでは、アレルギーや精子数の減少が報告されています。ただし、ごく微量に長期間さらされた場合のヒトに対する影響は明らかになっておらず、環境化学物質が子どもの健康へ与える影響についての研究が行われています。
子どもの健康を追跡
研究では、2万人の妊娠中の女性に参加してもらい、生まれてきた子どもの成長を追って健康への影響を調査する「出生コーホート」という手法が使われています。調査は妊娠中の母親の血液や生まれた赤ちゃんの臍帯(さいたい)血の検査、母親へのアンケート、子どもの尿や血液検査などを通じて行われ、その結果、環境化学物質と子どもの健康に関するデータが集まりつつあります。例えば、妊娠中の母親がプラスチックに添加される化学物質にさらされると、特に男の子の赤ちゃんの性ホルモンが減少することがわかりました。この性ホルモンの減少が、将来子どもの二次性徴や生殖に何らかの影響を及ぼすのかどうか、追跡調査が続けられています。
室内環境と健康の関係や海外での調査も
化学物質は室内環境とも深い関わりがあるため、室内環境と居住者の健康への影響が調べられています。また、例えばパソコンやスマホなどの電子機器にもプラスチックや難燃剤などが使われますが、日本で廃棄された製品はベトナムなどに運ばれて分解・リサイクルされます。国内だけでなく、それらの化学物質にさらされる現地労働者の健康についての調査も始められています。これらの研究成果は、私たちの健康障害を予防するために役立つでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 保健科学研究院 健康科学分野 教授 池田 敦子 先生
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