ビッグデータを活用してマクロの視点から医療を支えよう!
健康問題をマクロの視点で
集団内でどのような病気の人がいるのかなど、人々の健康問題をマクロの視点でアプローチするのが「疫学」です。特に感染症、新型コロナウイルスがまん延していた頃を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。同様にがんなどの生活習慣病の罹患率や死亡率に関する分析なども定期的に行われています。その分析には主に、国が主導している調査のほかに病院のカルテや医療ビッグデータが使われています。
医療ビッグデータの利点
カルテの場合、臨床情報も解析に含めることができますが、一部の病院のデータに限られるために全体の状況は把握しにくいことがあります。一方、医療ビッグデータは幅広くたくさんの患者情報を扱えることが利点です。医療機関を受診したり薬局で処方箋の薬を受け取ったりしたときの明細書を用います。「関節リウマチ」などの必ずしも届け出の必要がない疾患においても患者数や治療の全体像が明らかになりつつあります。今後はデータのさらなるデジタル化が推進され、AIの発達により、より詳細でかつリアルタイムな解析も可能になるでしょう。
薬の有効性を検証する
関節リウマチは、自己免疫反応による炎症で主に関節の痛みや腫れとなって現れます。患者は日本に約80万人いて、多くは50代以降に発症しますが若くして発症する人もいます。仕事や生活に支障をきたすだけでなく、約8割が女性であることから出産や子育てに影響が出る人もいます。昔は痛みを抑える対症療法しかありませんでしたが、2000年代に新たな治療薬が生み出されたことで寛解(病気の症状がない状態)をめざせるようになり、今も新しい薬が作られています。
医療ビッグデータは規模が大きいため、あまり起こらない副作用の頻度やリスク因子も検討できます。実際の医療現場でさまざまな患者に広く薬が使われるようになっても薬が有効にそして安全に使えるものなのか、どうしたら安全に使えるのか、薬の適正使用に繋がるデータを検証するのも疫学の大事な役目です。
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