金属から社会に役立つ先端的機能を持つ素材をクリエイトする
先端機能性材料の開発
物質を原子や分子といったナノメートルの領域で制御する技術を、ナノテクノロジーと呼びます。原子を観察できる電子顕微鏡を駆使した、ナノテクノロジーによる新素材やデバイスの開発が、材料工学の分野で行われています。鉄やアルミニウムといった身の回りのありふれている金属も、ナノテクノロジーによって先端機能性材料となります。
合金を酸で腐食させて作るナノ多孔質(ポーラス)金属という、新しい金属材料を例にしてみましょう。その一種であるナノ多孔質金は、中学や高校の理科実験でも作れます。市販の金銀箔と酸が材料です。金と銀の合金である金銀箔を酸に浸けて腐食させると、銀の原子が溶け出して金原子が残り、電子顕微鏡で見ると孔(あな)がたくさん開いたスポンジ状のかたまり(バルク構造)になります。これがナノ多孔質金です。
ナノ多孔質金属は優秀な触媒に
ナノ多孔質金属には、さまざまな種類や機能がありますが、バルク構造を生かした触媒としての応用も期待されています。触媒とは、それ自身は変化せずにほかの化学反応を促進する物質のことです。ナノ多孔質金属触媒の特性は、従来の触媒に比べて耐久性が高い、つまり化学反応の活性時間が長いことです。この性質を利用し、メタンや二酸化炭素といった、地球環境に悪影響をもたらすガスを減らすための効率的なナノ多孔質金属触媒の開発が行われています。
ナノ多孔質金属触媒をデザインする
従来の触媒は、酸化物の上に小さい面積で金属が乗っているという形状だったので、金属同士がくっついてしまい、劣化が早いのが難点でした。ところが、酸化物をナノ多孔質化した触媒は、金属と酸化物の界面が重なる部分が多いので、長時間の活性が維持できるのです。
こうした構造的に新しい触媒のデザインは、ナノ多孔質状の酸化物を作って、そこに金属を巻き付けるのが基本です。レシピ通りに作れば大量生産も可能なので、社会で広範囲に展開される材料となるかもしれません。
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高知工科大学 環境理工学群 教授 藤田 武志 先生
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