溶接による材料の組織変化を可視化

溶接による材料の組織変化を可視化

3つの溶接方法

溶接・接合とは、金属・セラミックス・樹脂などさまざまな材料を組み合わせて部品を作り出す技術で、さらに部品を組み合わせることで建造物や工業製品などができます。
溶接の方法は大きく分けて3つあります。溶接部の金属を一部溶かしてつなげる「融接」、固体の状態でこすってつける「圧接」、融点の低い合金のみを溶かして部材を接合する「ろう接」です。溶接でつないだ部分を「継手(つぎて)」といいます。継手の強度は、溶接プロセスと材料に左右されます。

金属の内部を視る

例えば鉄鋼材料は1000種類以上あり、建造物・工業製品は多くの素材を「適材適所」に組み合わせて作られます。溶接・接合によって材料はその内部状態を変化させ、継手には新たな「性質」が発現します。そのため、溶接・接合条件によって材料内で進行する状態変化を科学的に明らかにする必要があります。内部状態を調べる方法の一つに可視化技術があります。
摩擦攪拌接合という技術があります。これは新幹線の車体製造などに用いられる先進接合技術であり、摩擦熱で軟化した金属の流動の精密制御が技術のポイントになります。この流動を可視化する研究では、特殊な性質を有する透明な流体を独自開発して、軟化した金属の挙動を動的に観測します。

技能と技術に科学的根拠を与える

溶接部は原子レベルで最適な状態になるように設計されます。このために、電子顕微鏡法や各種分光分析より結晶の状態評価を行い、強度への影響因子を丹念に調べあげていく地道な研究が日々行われています。
熟練溶接技術者は光、音、振動、手ごたえなどから素材の変化を感覚的かつ的確にとらえて作業します。豊富な経験に裏打ちされた技能に科学的な根拠を与えることが未来の溶接技術へとつながるのです。

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富山大学 都市デザイン学部 材料デザイン工学科 教授 柴柳 敏哉 先生

富山大学 都市デザイン学部 材料デザイン工学科 教授 柴柳 敏哉 先生

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溶接工学

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メッセージ

溶接工学はものづくりに欠かせない技術です。溶接部は構造物の信頼性を左右し、地震などの大規模自然災害に耐える強靭な溶接構造物は安心安全社会にとって不可欠なのです。すなわち、溶接は命を守る技術であるといえます。
大学での4年間は広く深くそして複眼的に物事をとらえる能力を身に付ける訓練の期間ととらえて指導をします。「詰め込むだけ詰め込む」こともするし、厳しい議論もしますが、これらは社会に出て他者を助けられる人になってほしいし、世界を相手に大活躍してほしいからです。

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