社会を変える半導体集積回路の設計
AIにも欠かせない集積回路
IC、LSIといったチップを製造する半導体産業は経済規模が巨大であり、世界に与える影響力もダイナミックです。半導体とは、本来はシリコンなどの素材を指しますが、半導体を組み込んで設計された集積回路の呼称でもあります。その需要や生産は増加し続けています。最先端の半導体技術は、身近なスマホにも組み込まれているほか、データセンターやAI技術の進化にも欠かせません。
高速度でコスパの良い集積回路の設計
集積回路を設計する研究は世界的に重要視されています。工場ほど設備投資が必要なく、日本でも世界でも、実はエンジニアリングとして同じ土俵で戦える分野です。世界中に製造工場を持ち、製品が出回っているTSMC社が半導体製造のプラットフォームとなっており、どこでも同じ製品が手に入るので、違いを出せるのはその「設計」です。誰もが求める性能は、高速度の処理と、少ない消費電力です。この相反する性能を、いかにバランスを取って両立させるかが、回路設計の課題です。また、大量生産に耐えられる設計でなければ価値を失います。
時間をかけてシミュレーションする
集積回路の設計には、大企業では100~200人ものエンジニアがチームを組んで関わります。設計された集積回路が一般に使われるまで3年程度かかります。開発を開始した時点で、既存製品の数倍の性能をめざしていなければなりません。設計の考え方として、電流を制御するトランジスタに代表される半導体単体の性能を高めて最適化する方向と、すでに製品化された信頼性の高いトランジスタを効率良く組み合わせて設計する方向があります。ごくわずかな配線の変更でも性能が大きく変わりますし、小さく設計するほど性能は良くなるのですが、小型化は製造コストも上がってしまいます。設計者はCADで設計した集積回路を半導体工場で実際に作ってもらい、動作確認を繰り返して修正を加えます。このようにして最終的な製品は出来上がるのです。
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