地域社会のあるべき姿をデザインする「地域科学」
緊急輸送道路にどうアクセスするか?
日本では、災害(地震)発生時に必要な物資や負傷者を優先的に搬送できる「緊急輸送道路」が定められています。しかし、各避難所や物資の拠点と緊急輸送道路とが近いとは限らないため、避難所などから緊急輸送道路へ至るルートを確保しなければなりません。
このルートづくりでは、単純に最短距離をとるのでなく、効率的に各所を回れるルートを考える必要がありますが、数学の数理計画の考え方を用いて、最適化を図ることができます。
地域の課題を科学で解く
こうした大規模な問題から、過疎地域のインフラの問題など、地域に発生するさまざまなスケールの課題を解決するために、「土木計画学」という学問分野があります。ただし、実際の課題は土木に限らず、防災、交通、環境、産業振興など切り口もさまざまであり、「地域科学」と呼ぶ方がより実態に近いと言えます。
研究の主眼になるのは、課題解決によって人々の行動がどのように変わるのかを考え、地域や都市のあるべき「デザイン」を提示することです。それには、現状の分析と今後の予測をし、考え得る解決策を正しく評価する、という工程が必須です。例えば、過疎地域にトラックによる移動スーパーを走らせれば、住民の買い物が楽になることは明らかですが、これを理論的に証明するほか、頻度やルートを検討するなど、具体的な政策を進める際の重要なデータを作ります。工学だけでなく、経済学、経営学、社会学など、必要となる知見は多岐にわたります。
SNSにも解決のヒントが
近年、地域課題を解決する手法の1つとして、SNSの利用が増えています。例えば、Instagramなど画像系のSNSにおいては、ユーザーがアップする写真に一定の広告効果があると考えられます。
研究の結果、確かに背景が写り込んでいる写真のほうが好まれる傾向があることがわかったため、自治体にとっては、SNSを空間整備の優先度など公共政策に活用できると言えそうです。
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