機械を人間により近づける、画像認識についての研究とは?
人工知能は人間の能力を超える?
人間は遠くにいる人の顔がたとえ小さくて見えなくても、歩き方や服装などのほかの情報から「〇〇さんだ」と判断できます。人間の脳はとても複雑な仕組みを持っているのです。AI(人工知能)が人間よりも優れた能力を発揮することがありますが、それはわかりやすい顔を見つけるだけの簡単な認識や、簡単で明確なルールがあるチェスや将棋など、限定的な事柄に限られています。この限界を超えるため、人間の視覚や知能と同じようなことを機械にさせる「画像認識(コンピュータビジョン)」の研究が進んでいます。
ビッグデータがあってこその画像認識
画像認識では、注目したい対象の特徴から、それが何であるかを機械が認識します。そのためには前もって大量の画像から対象の特徴をとらえ、機械に学習させる必要があります。レベルの高い画像認識をするには、この大量のデータ(ビッグデータ)学習が欠かせません。近年はセンサによるデータ収集や計算機によるデータ処理の進化、機械が自動的に対象の特徴を学習するディープラーニングなどにより、認識率が格段にアップしました。例えば、スポーツの試合中継では、映し出された選手のデータやフォーメーションなどが瞬時に表示され、街頭では防犯カメラが不審者を割り出すこともできるのです。
人間のようにシーンの意味を理解できたら
画像認識とビッグデータ解析を使えば、未来の予測もできます。例えば、「混雑した遊園地で、効率よくアトラクションを回るにはどのルートがいいか」という課題の場合、撮影画像から認識される「時々刻々変化する混雑状況」の情報に加えて、天候・曜日別の入場者数・時間経過による混雑の変化など、過去の膨大な記憶データもあわせて解析することで、人の移動の傾向をとらえることができます。これは単なる一例で、この研究の目標は、どんな複雑なシーンでもその状況や映っているモノ同士の関係性を理解できる技術です。こうした画像認識の実現は、人間の視覚や脳の仕組みを考えることにもつながるはずです。
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豊田工業大学 工学部 先端工学基礎学科 教授 浮田 宗伯 先生
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