対話型ロボットが普及するための課題

対話型ロボットが普及するための課題

ロボットは人間の言葉を簡単には理解できない

対話型ロボットの利点は、人間が操作方法を知らなくても、ロボットを操作できることです。ロボットは人間に自分ができることを言葉で提示し、それに対し人間はしてほしいことを伝えます。しかし、ロボットが人間の言葉を理解するのは簡単ではありません。
まず、私たちの環境にはさまざまな音があります。テレビの音、BGM、会話、空調、電話の呼び出し音、チャイムの音、そのようなさまざまな音の中から、ロボットは自分に向けられた音だけに反応する必要があります。また、ロボットに向けて発せられる音声内容も同じとは限りません。「ウーロン茶を取ってこい」という命令を与える場合、人によっては「ウーロン茶」と言わず特定のお茶の商品名を言う人もいるかもしれません。「取ってこい」というフレーズも、「取ってきてくれ」と語尾を変えたり、ただ「お茶!」という場合もあるでしょう。さらに、方言やイントネーションの違いもあります。このような言い方が一定しない、多様性のある言葉を「自然言語」と呼んでいます。ロボットはこの自然言語を聞き分け、理解する能力が求められます。そこで、対話型ロボットの開発では、自然言語の「曖昧さ」や「多様性」をどう処理するかが大きな課題になります。

人間の声と非常ベルの音を聞き分ける

また、対話型ロボットが認識する対象は、人間だけではありません。例えば、対話している途中に非常ベルが鳴った場合、対話を中断して避難場所を教えるなど適切な対応が求められます。そのためには、非常ベルを警告音として認識できる機構を備えている必要があります。人間にとって、人間の声と非常ベルの音の区別は難しくありませんが、ロボットにとっては高いハードルです。しかし、それができなければ、「使える」ロボットにはならないでしょう。サービスロボットや家庭用ロボットなど、社会のさまざまなシーンでのロボット利用が期待されるなかで、音声認識技術はますます重要になると思われます。

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九州工業大学 情報工学部 知的システム工学科 教授 大橋 健 先生

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情報工学

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メッセージ

ロボット開発には、さまざまな要素技術が含まれています。音声認識やロボットの「目」を研究するコンピュータビジョン、行動を学習するシステム、複数のロボットを協調して動かすためのネットワーク技術。また、ロボットを動かすためには物理や制御システムの知識も必要です。ハード、ソフトの両面で、技術が集積されています。ロボットの応用はこれからですが、ここにも面白い分野が広がっています。これから成長が期待される分野で、裾野が広いので、きっとやりたいことが見つかると思います。

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「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・ 技術となっています。九州工業大学情報工学部は1986年 に創設された日本初、現在も国立大学法人で唯一の情報工学部で、2016年に創設30周年を迎えました。知能情報工学科、電子情報工学科、システム創成情報工学科、機械情報工学科、生命情報工学科の5学科があり、情報工学の学びを軸としつつ、各学科の応用分野に対する教育研究を進めています。特に、教育システムは、全学科がJABEEに認定され、世界的に通用するものであることが保証されています。