数学の知識を使って通信ネットワークを便利に

数学の知識を使って通信ネットワークを便利に

通信の重要性

通信ネットワークは現在、水道や電気などと同じ社会インフラの一部になりました。将来的には、車の自動運転や、ロボットを使った遠隔手術などで利用され、通信ネットワークの性能が生命に大きな影響を与えるようになります。そのため、いつでも確実にデータを通信できる通信ネットワークが必須であり、5G以降の移動通信システムや、通信ネットワークの仮想化、オールフォトニクスネットワークなどの研究開発が行われています。

異なる品質の通信サービスを提供するために

通信ネットワークはみんなが共同で使用しており、そのため高品質な動画データや遅れが許されない自動運転車や手術ロボットの制御データなども、他ユーザの利用状況に影響されて通信品質が劣化し場合によっては生命にも影響を与えてしまいます。期待する通信品質を実現するには、専用の通信ネットワークを構築すればよいのですが、サービスごとに通信ネットワークを構築するのは現実的ではありません。そこで、ソフトウェアによって通信ネットワークを分割してサービスごとに専用の仮想的な通信ネットワークを構築する技術「ネットワーク仮想化」の利用が期待されています。この技術によって、通信ネットワークを仮想的に分割し、サービスごとに専用の通信ネットワークを仮想的に構築していくのです。

通信ネットワーク資源の適切な割り当て

ネットワーク仮想化技術では、各サービスの要求品質や総資源量に応じて、各仮想ネットワークにネットワーク資源を適切に割り当てる必要があります。このとき、最適化問題と呼ばれる関数の最大化/最小化する問題を利用することで、最適な割当資源量を決定することが可能になります。この最適化問題では、数式内の変数や係数の値を変えるだけで様々な状況に応じた最適な資源量が決定できます。通信ネットワークの研究開発では、このような最適化問題を含む様々な数学の知識が活用されており、通信ネットワークのインフラとしての安定運用に加え、新技術による継続的な性能向上を実現しています。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 工学部 電気電子情報工学科 教授 橘 拓至 先生

福井大学 工学部 電気電子情報工学科 教授 橘 拓至 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報通信工学、情報工学、電気電子工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のあなたは普段から通信ネットワークを自由に利用し、その存在を意識する機会はほぼないと思います。そのため、研究で解決すべき課題が通信ネットワークには残されていないように感じるかもしれません。しかし、通信ネットワークは常に、新技術の導入による性能の向上が求められています。特に、将来の遠隔医療や空飛ぶ自動車の自動制御などの実現に向けて、生命にも直接影響する非常に重要な研究課題が多数存在しています。インフラとしての安定運用と画期的な新技術による性能向上に向けて是非一緒に研究に取り組みましょう。

先生への質問

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福井大学に関心を持ったあなたは

本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で11年連続ナンバー1の実績があります。(H19-29年度)