入院直後の「意識の曇り(せん妄)」をチーム医療で防ぐ
入院直後に陥りやすい「せん妄」状態
人は、病気の悪化や入院による急激な環境の変化から、意識が曇ったような状態になることがあります。これを「せん妄」といいます。症状は、暴れたり、つじつまの合わない行動を取ったり、幻覚・幻聴などが起こったりします。また、無反応になる場合もあります。認知症との区別が難しく、家族は「急に認知症が発症した」「認知症が悪化した」と感じることがあります。医療従事者でも、どちらかわからないことがあり、認知症と並行して発症することもあります。しかし、大きく違うのは、せん妄は長くても1週間程で治ることが多いということです。
せん妄が生存にも悪影響
せん妄は起こす人と起こさない人がいます。高齢者に多いものの、若い人でも大きな手術の後や薬剤の影響などから起こることがあります。原因となる疾病や要因は、さまざまです。家族の多くは「この状態がずっと続くのか」とショックを受けますから、不安を感じないよう看護師が説明する必要があります。
せん妄がその後の生存に悪影響を与えるといわれています。その理由は、もともとの体の状態や行動を制限するために拘束をすることで肺炎になったり、筋力が低下したりすることだと考えられます。ですから、予防や早期対応が必要なのです。
看護師は多職種をつなぐ役割を担う
せん妄が発症しているときの体験は、怖いものほど残りやすく、その患者さんは入院・治療がトラウマになってしまうので、それを防ぐ必要があります。看護師が中心となって、入院直後からせん妄予防の早期対応をすることで、症状は軽くなります。つまり、せん妄に対するチーム医療が求められているのです。例えば、薬剤については薬剤師と相談し、せん妄の症状が出にくい薬剤の選択と提案を医師に行います。自分で動くこと、転倒を予防することの両立のために病室やリハビリをする場所の物の配置については、作業療法士らとの調整が必要です。看護師は多職種をつなぐ役割も担っているのです。
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富山県立大学 看護学部 看護学科 成人急性期看護学講座 講師 寺内 英真 先生
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