高齢者入院の落とし穴 リハビリで心身機能低下を防ごう!

高齢者入院の落とし穴 リハビリで心身機能低下を防ごう!

体を治すはずの入院が

けがや病気を集中的に治療する必要があるときに「入院」は効果的です。ところがその入院が、高齢者にはマイナスの影響を及ぼして、退院後に介護が必要になるほど心身機能を低下させてしまうことがあります。これは入院で体を動かさなくなることが原因で、「入院関連機能障害」と呼ばれます。例えば食事一つをとっても、入院中はベッド上に配膳された食事をとるだけで準備や後片付けといった動作はしなくてもよく、体を動かさなくなった結果、動けなくなってしまうのです。若い人や体力のある高齢者は入院中も活動的なのでこの機能障害に陥ることはほぼありません。しかし、入院前から加齢による心身機能の衰えで健常者と要介護者の中間にあるフレイル状態の人は、入院により体力や生活能力が大きく低下してしまいます。

退院後のリハビリ継続がカギ

入院で心身機能が低下した人にはリハビリが必要です。入院中にもリハビリが行われますが、平均的な入院の日数は2週間程度であり、体力を元通りに回復させるには不十分です。そこで退院後にも、元気な人であればスポーツなどの運動を、そうでない人は退院前の指導に基づく運動や、介護保険を利用した訪問あるいは社会福祉施設に通ってのリハビリを継続することが重要です。ところが、退院後のリハビリの継続状況の調査によれば、実際に継続できている人は10%未満にとどまり、「継続すること」が大きな課題であるとわかりました。リハビリ継続のモチベーションを保つためのリハビリ手帳の導入やデジタル機器の利用、病院と介護保険の領域との連携などが検討されています。

そもそも入院しないように

また、「入院予防」も必要です。最近では、フレイル予防に重要な「運動、栄養、社会参加」は知られるようになってきましたが、それに転倒予防や生活習慣病予防などを加えて入院予防を周知させる取り組みも行われています。
入院によって健康寿命が途切れてしまうことなく、生物学的な寿命に近づけることが目標とされています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 助教 小山 真吾 先生

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高齢者理学療法学、内部障害理学療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は15年間、理学療法士として病院の現場で働いてきました。患者さんと一対一で向き合う現場の仕事は、感謝もされ、とてもやりがいがあります。その一方で研究にも従事して、現場での経験を「高齢者の方々」というよりも大きな社会の対象に還元することをめざしています。このように理学療法士の仕事は、社会全体にも貢献できます。本学保健科学部の理学療法学専攻では、理学療法士国家試験の受験資格を得られて、かつ研究もできます。超高齢社会においてあなたがやりたい学問をぜひ探しに来てください。

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