助産師に求められる教育を考える

助産師に求められる教育を考える

助産師になるには

助産師は、出産時に赤ちゃんを取り上げる助産や、妊産婦や赤ちゃんの保健指導を行い、わが国では女性限定の職業です。また、助産は助産師の独占業務で、助産所を開業することもできます。助産師になるには看護師と助産師の国家資格が必要です。そして、助産師の資格に合格したら、すぐに現場で助産業務にあたれるように、学生のうちから助産を10例程度経験しなければなりません。

助産師として求められる能力

現在は、晩婚化・少子化の傾向が顕著で、出産総数は減っています。一方で、高齢出産や不妊治療後の出産、慢性的な病気を持つ女性の出産など、高いリスクが懸念される出産は増加傾向にあります。学生のうちは、正常な経過の助産を扱いますが、実際の出産現場では、順調に進んでいても赤ちゃんが急に苦しくなったり、出産が進まなくなったりと、途中で帝王切開などの手術に切り替わることもあります。そのような状況に備えて、正常経過の助産を扱う能力以外に、高いリスクが懸念される状況に対応できる能力も必要です。どんな状況でも慌てずに、助産師としての役割を果たすには、妊産婦や赤ちゃんに何が起こっているのかを適切に判断し、求められる支援は何かを考えられる専門的知識と、それを実行できる技術や態度を身につけ、現場での経験を重ねていくことが大切です。

広がる助産師の役割

さらに近年では、社会から助産師に求められる業務の範囲が広がっています。周囲からのサポートを得られず大きな育児不安を抱えたり、子育てと親の介護が重なってしまったり、出産後の母親のストレスが高まっていることから、産後うつ病を発症する人も増加しています。そのため国は自治体に対して「産後ケア事業」として、出産後1年間は育児支援の体制を確保することを努力義務としました。現在は、多くの助産師が産後の支援にあたり、母親のメンタルケアや母乳育児支援などに携わっています。助産師の育成には、出産以外にも、幅広く専門性の高い教育が求められているのです。

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先生情報 / 大学情報

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 看護学科 教授 村上 明美 先生

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 看護学科 教授 村上 明美 先生

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助産学、看護学、保健福祉学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は常に学生を信じます。何を言われても、もしもうそをつかれたとしても、「信じて話を聞くからね」と、学生に伝えます。そうすると学生は心を開いて話をしてくれるようになりますし、うそになってしまうことは言わなくなります。
あなたには、他者を信じてほしいと同時に、自分自身のことも信じてもらいたいと思っています。あなたの中には必ず、あなたにしかできないことがあります。あなたの能力を発揮できる場が必ずあります。それに出会えるきっかけを積極的に探してください。自分の能力を信じて進みましょう。

先生への質問

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神奈川県立保健福祉大学に関心を持ったあなたは

神奈川県立保健福祉大学では「ヒューマンサービス」を使命とし、人材育成、教育・研究活動、地域貢献活動を行っています。
ヒューマンサービスとは、一人ひとり人格を持った大切な人として生かされ、生きがいを持ち、その人らしく生きられるように、他の人を支援していく理念を言います。
すべての人がその人らしく生きていくことができる未来のために、私たちはすべての人に真に向き合い支えることのできる、心と知識・技能を兼ね備える人を育み、新時代にふさわしい保健・医療・福祉の未来を切り拓きます。