身体機能の障がいを「生体信号」の解析技術でサポート
生体信号で機器を操作
小児麻痺(まひ)や難病で手足を思い通りに動かせない人たちを、工学の技術でサポートする研究が進んでいます。手足をはじめ筋肉は、電気信号によってコントロールされているのですが、その「生体信号」を解析することにより、身体機能を代替する機器を操作しようというものです。
義手、義足などさまざまな分野で技術開発が進められていますが、実用化されているものの1つに、目の動きや顔の動きによって電動車イスなどを操作できる「電位計測ゴーグル」があります。眼球や、目の周辺の表情筋の動きだけで、機械操作が可能になる装置です。
眼球と表情筋の「電位」の変化を同時に計測
筋肉を動かすと、体表の「筋電位」が変化します。また、眼球の黒目の部分はプラス、白目の部分はマイナスの電位を持っているので、眼球を動かすことで「眼電位」が変化します。電位計測ゴーグル内には、表情筋の電位を測るセンサーと眼電位をとらえるセンサーが内蔵されていて、それらで検知した生体信号の変化をソフトウェアで処理して、機器操作のための信号に変換するのです。
筋電位や眼電位は非常に微弱な電気信号なので、周囲の電子機器から発せられる電磁波などが大きなノイズとなります。そのため、周波数解析などによる高精度なノイズフィルターの開発も、より正確な操作性を得る上での重要課題です。
健康な人たちのための活用法も
電位計測ゴーグルは、重篤(じゅうとく)な身体の障がいをサポートするために研究・開発がスタートした装置ですが、現在は健常者のための活用法も研究されています。例えば、計測方法は異なりますが、自動車学校の教習生にゴーグルを装着してもらい、運転中の視線の動きを測ることで安全確認の状態を数値化できれば、より適切な評価と安全指導ができるようになります。加齢にともなって四肢の機能が大幅に衰えた高齢者をサポートするための、なんらかの機器と組み合わせることもできるかもしれません。生体信号の解析と活用は、今後、大きな広がりが期待できる研究領域なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
宮崎大学 工学部 工学科 電気電子工学プログラム 教授 田村 宏樹 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
人間情報学、生体工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?