消えない「泡」に、生活環境を変えるヒントがあった!
海や川に浮かぶ、消えない汚い泡の正体とは?
海の岩場や、川のよどみには、汚れた泡がたくさん浮かんでいます。「泡」はすぐにはじけてなくなるはずなのに、汚い泡が消えないのはなぜでしょう?
海や川の水中には、さまざまな有機物が存在し、それらに含まれるタンパク質などの物質が、波や風で水中に引き込まれた気泡に混じると、界面活性の作用をするため、安定的で割れにくい泡が形成されます。この泡の表面は、水中に漂う懸濁(けんだく)物質(水に溶けない粒子)を吸着する性質があるため、さまざまな汚れを吸着・濃縮しながら水面に浮かび、なかなか割れない汚い泡になるのです。
水を浄化する技術を「公衆衛生」分野に導入
気泡が水の汚れを吸着・濃縮する自然現象を、人工的かつ大規模に再現し、効率的な水質浄化技術として導入したのが「泡沫(ほうまつ)分離法」です。汚染物質を泡に集積させ、その泡を捕集することで、実験室規模の水槽なら、まさに「瞬時」に水をきれいにできるほか、新幹線や列車を洗車した処理しにくい汚れも除去できるようになりました。
さらに、この技術を応用させて「公衆衛生」分野に活用する研究が進められています。川やダムなどの水に潜む病原性ウイルスや真菌類を探し出し、適切な衛生管理対策を検討する試みです。
速く、高感度に、ウイルスや菌を検出
人間や家畜に害をなす病原性大腸菌や感染性ウイルスの多くは、川やダムなどの水に生息していると考えられています。そのため、研究者たちは調査地の水をフィルターで漉(こ)し、残った粒子を流し出して検査を行っていますが、フィルターには目的以外の汚れも大量に残ってしまうので非効率でした。その点、泡沫分離法を活用すれば、泡表面に吸着した物体だけを採取すればよいので効率的です。圧倒的に短時間で検査できるほか、フィルターではほとんど検出できなかったような、超微量の物体も探し出せます。この方法で水質を調べ、必要な対策を講じることで、大規模な感染症の発生を防げるようになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 工学部 工学科 土木環境工学プログラム 教授(学部長) 鈴木 祥広 先生
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