ヒトから発せられる「生体信号」を使ってできることとは?

ヒトから発せられる「生体信号」を使ってできることとは?

生体からの情報活用でできること

ヒトの脳や心臓、脈といった生体の動きからは、ごく微量な電気や振動が発せられています。その生体信号をキャッチして、工学的な解析をすることで、さまざまなことができるようになります。例えば、呼吸や血圧、心電図などを総合的に評価することで、集中治療室の患者の状態をいち早くキャッチできます。容態の変化などを予測できるようになれば、医師への助言も可能になります。また、麻痺や切断で手を動かせない人でも、脳は手を動かすように、すなわち運動の指令を出しています。その運動のイメージや感覚を呼び起こすことで、機能回復治療に活用できます。さらに、超高齢社会となった日本では、いずれ自宅で椅子に座るだけで、在宅医療や退院後の回復期に必要な情報を管理するヘルスモニタリングが実現するでしょう。

伝統技能の継承や感情のキャッチも可能に

活用できるのは、医療だけではありません。人の動きをキャッチする加速度センサなどを使って匠(たくみ)の技能を数値化すれば、誰もがその動きの習得に役立てることができます。失われつつある日本の伝統的な技能を、こうしてモデル化し後世に残すことができるのです。
生体信号で人の感情もキャッチできます。つらくても笑顔で「大丈夫」と言ってしまう人がいます。脳波などによって感情を客観的に判断できれば、本人や周りの人が気づいてないストレスや疲れなどによる精神疾患への危険性に早く気づけるようになるでしょう。企業においても、消費者の購入時や使用時の感情などを把握することで、商品開発やサービス向上などに活用できます。

医療福祉現場を支え、生活を豊かにする

生体信号を解析して視覚化や数値化し、わかりやすく表示することで、医療や福祉に貢献ができます。このような形で、医療の現場を支えているのは、生体信号を解析する情報電気工学や医用生体工学と呼ばれる分野です。アイデア次第で、あらゆる医療や福祉の現場や私たちの生活で生体信号の活用の領域が広がります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 工学部 情報電気工学科 准教授 伊賀崎 伴彦 先生

熊本大学 工学部 情報電気工学科 准教授 伊賀崎 伴彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

医用生体工学、情報電気電子工学、工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が研究する分野は、工学はもちろん、医学や心理学の分野にも関わりますが、理系分野に進学を考えていても国語力は非常に重要で、基礎的な力です。技術者は他者の意図を正確に理解したり、他者へ論理的に説明したりする力が必要です。社会人になれば、報告書などの提出や、資料を理解することも必要となります。いいことを思いついても、相手に伝える意思や力がないと、何も引き起こせません。相手に理解してもらうには、相手を理解することも大切です。ディベートなどを通じて議論する力を身につけておきましょう。

先生への質問

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熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。