カニ殻由来の機能性食品が、腎不全悪化や合併症を食い止める!
捨てられていた「カニ殻」に有用成分が
カニ料理を食べるときは、殻をむいて身だけを食べます。しかし実は、殻には体によくないものを排出してくれる成分が含まれているのです。カニやエビの殻を構成する食物繊維「キトサン」は、天然多糖類の中でも唯一、プラスに帯電したアミノ基を有しています。そのため、飲食物に含まれる重金属などのマイナスの電荷の成分に吸着し、腸で吸収されにくくする性質があるのです。そこで、飲食物の内容を細かく制限しなければならない人たちをサポートするため、キトサン製サプリメントの研究が進んでいます。
尿毒症物質による合併症の予防効果も
腎臓に重い障がいのある人は、塩分やカリウムなどの摂取量を厳しく制限されます。特に、タンパク質を構成するトリプトファンは、エネルギーとして使われた後に尿毒症の原因となる物質に変化するため、体に吸収させたくない成分の代表格です。
そこで、人工透析治療を受けている複数の患者さんたちに、ビスケットタイプのキトサンを連続して食べてもらったところ、尿毒症物質の減少が確認されました。そのためキトサンは、腎不全の悪化抑止だけでなく、尿毒症物質による合併症の予防にも役立つことが期待されています。
さらに広がりそうな利用法
サプリメントなどに使うキトサンは、最新の粉砕技術を用いてナノファイバー化することができます。ナノサイズなので利用する際の形が自由で、ゼリー剤やカプセル剤、塗り薬など、さまざまな用途への応用が可能です。しかも、天然素材なので副作用の心配がほとんどなく、一般には捨てられているものなので原材料費も非常に安価です。「不要なものに吸着し、排出する」というシンプルな作用なので、今後研究が進めば、いろいろな薬とキトサンナノファイバーとの組み合わせにより、薬の効果を最大限に発揮させることができるようになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
崇城大学 薬学部 薬学科 教授 安楽 誠 先生
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