「元素」の力を、健康や医薬品に生かす!

「元素」の力を、健康や医薬品に生かす!

あなたの体内には20種類以上の元素が!

日本の研究者が発見した元素が、2015年に113番目の新元素として国際的に認定されました。元素というと周期表をイメージすると思いますが、実はあなたの体内には20種類以上の元素があるのです。その中には有機元素の炭素だけではなく、鉄・銅・亜鉛といった微量な無機元素も含まれており、生命活動において重要な働きを担っています。例えば、貧血は鉄分だけではなく、銅やコバルトなどの不足から生じる場合があります。また、赤ちゃんが飲む粉ミルクには亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、カルシウムが必ず入っており、無機元素は赤ちゃんの健やかな成長にも不可欠なのです。

化学療法の歴史は「ヒ素」から始まった

「ヒ素」と聞くと、恐ろしい「毒」のように思いがちです。100年以上前、ドイツのエールリッヒと日本の秦佐八郎(はたさはちろう)の共同研究により、梅毒という感染症に有効な化学物質が発見されました。その物質がヒ素化合物であり、彼らは化学物質を用いて治療を行う「化学療法」の先駆者となりました。
現在、抗がん剤を投与している人の7割に白金を含んだ薬が使われており、高齢者に多く処方される血流改善の薬にはコバルトが含まれています。また、糖尿病の人は亜鉛が欠乏することから、亜鉛を用いて毒性や副作用が少ない医薬品を開発する研究も行われています。

元素には「健康に長生き」の可能性も

近年、高度先進医療のひとつである「中性子補足療法」に注目が集まっています。この療法では、有機元素の炭素や無機元素のホウ素からなる化合物を投与し、そこに中性子線を照射することで、ホウ素と中性子が核反応を起こして化合物から放射線を放出させてがん細胞を破壊します。このホウ素化合物にはまだまだ未知の領域が多く、これから研究が進んでいけば多くのがん患者の命を救うことができるでしょう。また病気の治療だけではなく、古代から近代・現代までの各時代の食生活を原子レベルで分析・比較して、病気の予防や健康長寿につなげる研究も始まっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都薬科大学 薬学部 薬学科 分析薬科学系 代謝分析学分野 教授 安井 裕之 先生

京都薬科大学 薬学部 薬学科 分析薬科学系 代謝分析学分野 教授 安井 裕之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

薬学、化学、生命科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたの命の誕生は、地球の誕生、ひいては宇宙の誕生にも関係しています。その証拠にあなたの体の中には、化学の周期表にある元素が20種類以上も含まれており、それらが密接に関係し合うことで命は守られ、健康が維持されているのです。
薬学部では、生命を司る体の中の元素を分析することで病気の診断や予防に生かし、生命元素の力を借りて新しい医薬品を産み出すことに挑んでいる大学教員や研究者がいます。「人はいかにすれば健康に長生きすることができるのか」を、京都薬科大学で一緒に研究してみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都薬科大学に関心を持ったあなたは

京都薬科大学では、「愛学躬行」を建学の精神とし、2024年に創立140周年を迎えました。薬の専門家として質の高い薬剤師を養成し、高度化・多様化が進み安全・安心の医療が求められる中、真に社会に貢献しうる人材を目指し、問題発見、問題解決型の教育に力を注ぎ、Science(科学)、Art(技術)、Humanity(人間性)のバランスのとれた人材育成します。そして、学術研究の推進とともに、高度の専門的能力や研究能力を有する薬剤師であるファーマシスト・サイエンティストを養成します。