「水」を化学的に調べることで、環境保護や地域経済への貢献が可能に

「水」を化学的に調べることで、環境保護や地域経済への貢献が可能に

含有物のバランスの良さが「きれいな水」の条件

「きれいな水」と聞いて、あなたはどんな水を思い浮かべますか? 徹底的に浄化した水もきれいなのですが、人や動物、さらに水生生物や植物が生きていくためには、有害物質を含まない、しかしさまざまなイオンなどがバランスよく含まれている、「健康な水」が必要です。
熊本市は飲料水のほぼ100%を地下水でまかなっている、世界的にも珍しい都市です。その分、水質の変化には神経をとがらせており、10年ほど前から地元の大学と自治体とが協働し、市内を流れる河川の水質と環境的要因を化学的に分析しています。

余分な物質を微生物のエサに

熊本市の河川や地下水では、硝酸イオンをはじめとする窒素の濃度が徐々に高まっています。調査の結果、肥料、家畜のし尿や食品加工工場などからの漏水が主因であると予想されました。人体に悪影響を及ぼす量ではないものの、長年放置しておくと、市民はもちろん、人間より大量の水を飲む牧牛への健康被害が懸念されます。
そこで、微生物の中でも特に多くの硝酸を分解するロドトルラ属の酵母を使い、河川水や地下水をきれいにする研究が進められています。10リットル入りの水槽に約1000億個の酵母が入ったカプセルを投入し、空気を吹き込みながら循環させると、1週間足らずで水中の硝酸がほぼゼロになるという実験結果が出ています。

希少なスイゼンジノリを屋内量産

「スイゼンジノリ」は、熊本の水前寺公園内で発見され、現在ではごく限られた地域でしか自生しない川藻です。高級食材として珍重されているほか、極めて高い保水力を持つことから、化粧品や塗り薬の材料として注目されています。
スイゼンジノリが自生する環境を徹底的に調査したところ、硝酸イオンの濃度が通常より低い一方で、硫酸イオンの濃度が高いという、少し変わった水質であることが判明しました。そこで現在、地元の大学と企業のコラボレーションで、水質や日照時間を再現した屋内型量産設備の研究が進んでいます。

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崇城大学 工学部 ナノサイエンス学科 教授 西田 正志 先生

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環境分析化学、分析化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「飽きっぽい」というのは、決してほめ言葉ではありませんが、「新しいもの好き」は環境分析化学の分野では役立つ素養の一つと言えます。というのも、環境について研究するためには、化学の専門知識はもちろん、環境を構成する生態系や微生物の専門家、さらに環境浄化のために機械や建築系の専門家とのコミュニケーションも必要になるからです。
もしもあなたが、大学で環境に関わる研究をしたいと考えているなら、いろいろな事柄に関心を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせる気持ちが重要です。

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崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。