講義No.10041 物理学

138億年の宇宙の歴史と不思議を解き明かす銀河研究

138億年の宇宙の歴史と不思議を解き明かす銀河研究

銀河の数は数千億

宇宙の中で、数千億個の星が集まってできる天体を銀河といいます。地球が属する天の川銀河や、天体望遠鏡で容易に観察できるアンドロメダ銀河をはじめ、数千億にも及ぶとされています。銀河は楕円型や渦巻き型の構造をしていて、「星、ガス、ダークマター」という3種類の物質でできています。ガスは、新たな星が作られる材料となるものです。ダークマターとは、まだ直接は観測されたことのない物質ですが、質量があることは証明されています。この3種類の物質が互いの重力で結合されて、銀河を形成しています。

巨大ブラックホールと銀河

多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在します。2019年に初めてその影の画像が撮影され、存在が実証されました。こうした巨大ブラックホールはときどき活発に活動することがあります。重力エネルギーを解放し、四方八方にX線を放射したり、周辺にある物質がブラックホールからエネルギーを受け取り周囲に放出する「アウトフロー」という現象を起こしたりするのです。アウトフローによって巨大ブラックホールの周囲のガスがなくなると新たな星が生まれなくなり、銀河の進化が止まってしまうなど、巨大ブラックホールが銀河の進化に深く関わっていることがわかっています。

時空を超える研究

銀河進化を研究するためには、銀河を観測する必要があります。日本の国立天文台にも、可視光や赤外線をキャッチして観測を行う「すばる望遠鏡」や、天体が放出する電波をキャッチして観測する「アルマ望遠鏡」といった大型の望遠鏡があります。現在の大型望遠鏡は、約130億光年先の銀河を観察することができます。宇宙が誕生して138億年といわれているので、宇宙が誕生してから数億年しか経っていない初期宇宙に存在する銀河の観測が可能なのです。
遠くを観測することが、時間の流れをさかのぼることにつながる点が、天文学研究の醍醐味です。今後、望遠鏡の性能がさらに進化すれば、これまで見えていなかった宇宙の不思議が一気に解明されるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

愛媛大学 理学部 理学科 物理学コース 教授 長尾 透 先生

愛媛大学 理学部 理学科 物理学コース 教授 長尾 透 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

天文学、宇宙物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学でどの学部に進み、何を学ぶかを考える上で、将来の職業や仕事につながることを基準にする人もいます。しかし、AI(人工知能)をはじめとする科学技術の進化は目覚ましく、今求められている仕事でも20年、30年後にあるとは限りません。
このように激しく変化する時代にあっては、自分で不思議に思うことを発見し、その問題を自ら解決する能力や方法を身につけることが大切です。特に、私が所属する理学部では、ものを考える力、問題を解決する力を養えますので、あなたにもお勧めします。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

愛媛大学に関心を持ったあなたは

愛媛大学は、「学生中心の大学」の実現をめざして、学生の視点に立った改革を進めています。そして、すべての学生が入学から卒業までの過程で、自立した個人として人生を生きていくのに必要な能力を習得することをめざしています。そのため本学では、正課教育のほか、正課外のサークル活動(正課外活動)やボランティア活動、留学、下級生への学習支援(準正課教育)等を通じ、その能力を磨くための多くの機会を設けています。あなたの可能性が広がる学び舎、それが愛媛大学です。