138億年の宇宙の歴史と不思議を解き明かす銀河研究
銀河の数は数千億
宇宙の中で、数千億個の星が集まってできる天体を銀河といいます。地球が属する天の川銀河や、天体望遠鏡で容易に観察できるアンドロメダ銀河をはじめ、数千億にも及ぶとされています。銀河は楕円型や渦巻き型の構造をしていて、「星、ガス、ダークマター」という3種類の物質でできています。ガスは、新たな星が作られる材料となるものです。ダークマターとは、まだ直接は観測されたことのない物質ですが、質量があることは証明されています。この3種類の物質が互いの重力で結合されて、銀河を形成しています。
巨大ブラックホールと銀河
多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在します。2019年に初めてその影の画像が撮影され、存在が実証されました。こうした巨大ブラックホールはときどき活発に活動することがあります。重力エネルギーを解放し、四方八方にX線を放射したり、周辺にある物質がブラックホールからエネルギーを受け取り周囲に放出する「アウトフロー」という現象を起こしたりするのです。アウトフローによって巨大ブラックホールの周囲のガスがなくなると新たな星が生まれなくなり、銀河の進化が止まってしまうなど、巨大ブラックホールが銀河の進化に深く関わっていることがわかっています。
時空を超える研究
銀河進化を研究するためには、銀河を観測する必要があります。日本の国立天文台にも、可視光や赤外線をキャッチして観測を行う「すばる望遠鏡」や、天体が放出する電波をキャッチして観測する「アルマ望遠鏡」といった大型の望遠鏡があります。現在の大型望遠鏡は、約130億光年先の銀河を観察することができます。宇宙が誕生して138億年といわれているので、宇宙が誕生してから数億年しか経っていない初期宇宙に存在する銀河の観測が可能なのです。
遠くを観測することが、時間の流れをさかのぼることにつながる点が、天文学研究の醍醐味です。今後、望遠鏡の性能がさらに進化すれば、これまで見えていなかった宇宙の不思議が一気に解明されるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 理学部 理学科 物理学コース 教授 長尾 透 先生
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