川にすむ生き物の視点から、川づくりを考える
いま、川で何が起こっているのか
身の回りにある川は、水資源や遊び場の提供など、私たちの生活に密接に関わっています。その一方で、人々は昔から洪水などの災害にも悩まされてきました。高度成長期には洪水を防止し、人々が生活する土地を確保するため、曲がりくねった川をコンクリートなどでまっすぐに整備する工事や、ダム造りなどが盛んに行われてきました。その結果、川の流れが単純になり、ある程度の氾濫は防げるようになりましたが、人が流す排水によって水質が劣化するなどして、もともと川にすんでいた生き物が減ってきたり、多様性が低くなったりする現象も起こっています。
人間の活動や気候変動が川にもたらす影響とは
整備され、まっすぐになった川は洪水を防ぐのには効果的ですが、流量が急激に増えた時に生き物が逃げる場所がありません。また、雨の降らない日が続いて川の浅い部分が干上がってしまった時にも避難場所がありません。例えば、愛媛県中部を流れる重信川(しげのぶがわ)で2017年9月、大型台風の影響によって川の流量が増え、戦後最高水位を記録しました。台風が来る直前とその2カ月後、水位が下がってきた時期に行われたカゲロウ、ヤゴ、エビなど底生動物の生息調査では、個体数が8割以上も減っていました。一方、カゲロウなどと比べて移動する能力が高い魚は、池のようになっている止水域「ワンド」に逃げ込んでいて、そこまでは個体数が減っていませんでした。
生態系を守るための川づくりとは
川にすむ生き物たちの生態系を守ったり、川からいなくなった生き物を呼び戻したりするためには、どのような川づくりをすればよいでしょうか。その1つの方法が、洪水が起こった時に生き物が避難できる場所をつくることです。川の中に魚の逃げ場所となっていたワンドのような、流れが緩やかな場所をつくるのです。
人間の活動によって変わってしまった川を、どのようにして管理していくかは、今後、ますます重要となるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 工学部 環境建設工学科 教授 三宅 洋 先生
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