遺伝情報発現の仕組みを知る「RNAの研究」
遺伝情報はどうやって伝わるの?
親から子、孫には、顔や手足の形といった体の特徴や性格など、何らかの性質や形が伝わります。この伝達、遺伝に大きく関わっているのが、「DNA」です。DNAには、生き物の性質や特徴などの遺伝情報が格納されています。DNA上の遺伝情報は、「RNA」という物質を介して、人間が生きるために必要なタンパク質へと変換されます。この一連の流れを「セントラルドグマ」と言います。
まだまだ謎が多い「RNA」
遺伝情報を転写されたRNAは、編集加工されて、初めて細胞の中で役に立つ状態になります。セントラルドグマの原理が提案されたのは1957年のことですが、RNAが編集加工され、人間の体の中で機能する過程は、今でも最先端の研究テーマです。
例えば、ヒトとチンパンジーの遺伝子は、約99%が同じで、違いは1.23%のみです。もしRNAが、遺伝情報をただコピーするだけなら、両者は99%同じ存在となるはずですが、実際は大きく違います。それは、RNAの編集加工や制御の方法が違うからだと考えられています。
さまざまな生命科学の研究につながる
もっとも多彩な編集加工を受けるRNAに転移RNA(tRNA)があります。tRNAは、タンパク質合成装置リボソームにアミノ酸を供給し、同時に伝令RNA(mRNA)に写し取られた遺伝情報を読み取る装置でもあります。tRNAでは、編集加工の一つとして、メチル化やアセチル化などさまざまなタイプの修飾を受けますが、これらtRNA修飾の異常は、ヒトではさまざまな遺伝病の原因となることがわかってきました。また、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、tRNAのメチル化を利用して感染することもわかっています。このため、tRNA修飾の研究は、遺伝子診断・遺伝子治療の開発に直結し、感染症対策でも重要な分野になっています。さらに、tRNA修飾は、生物ごとに大きく異なり、生命の多様性や進化、環境応答を考察する上でも重要になっています。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 工学部 応用化学科 教授 堀 弘幸 先生
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