みかんから、花粉症を抑制する成分を発見

みかんから、花粉症を抑制する成分を発見

みかんの搾りかすから驚きの成分

柑橘類生産量が40年間日本一という愛媛県では、主に温州みかんを使ったジュースなどの加工も盛んに行われています。そこでは搾りかすが大量に出るのですが、実はその中に、ある機能を持った成分が含まれていることがわかりました。柑橘類成分というとビタミンCやクエン酸が知られていますが、皮の部分にたくさん含まれている「ノビレチン」という成分には、花粉症などのアレルギー症状を緩和する機能があることが、研究によって実証されたのです。

花粉症抑制のメカニズムの解析と実証

アレルギー症状を引き起こすのは「ヒスタミン」という成分です。好塩基球という細胞の表面に結合しているIgEという免疫タンパク質にスギ花粉などのアレルゲンが反応すると、細胞内に刺激が伝わり、ヒスタミンを放出します。それが粘膜を刺激することで鼻水や涙などのアレルギー症状が起こります。ノビレチンは細胞に伝わる刺激をブロックし、ヒスタミン放出を抑える機能があるのです。さらに、同じくアレルギー症状緩和機能を持つ牛乳タンパク質「β-ラクトグロブリン」をノビレチンと一緒に摂取することで、より強く症状が抑制されることもわかりました。
これらメカニズムの解析と実証には、培養細胞やマウスを使った実験を経て、ヒトによる試験も行われました。花粉症の症状がある47人に、ボランティアで温州みかんの皮で作った「みかんヨーグルト」を一定期間食べてもらい、症状の経過を調査したところ、明らかな症状改善効果が認められました。こうして、温州みかんとヨーグルトの同時摂取で花粉症の症状が顕著に抑制されることが実証されたのです。

商品開発で研究を社会に反映

応用生命化学は応用の学問ですから、研究成果をどう社会に役立てるかが重要です。今回の実証を元に、学生と地元企業が一体となった商品開発も行われました。「みかんヨーグルト」は機能性食品(健康食品)として発売される予定です。大学は研究だけでなく、このような学生主導型の商品開発も行っているのです。

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先生情報 / 大学情報

愛媛大学 農学部 生物資源学科 応用生命化学専門教育コース 教授 菅原 卓也 先生

愛媛大学 農学部 生物資源学科 応用生命化学専門教育コース 教授 菅原 卓也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

応用生命化学、食品機能学、食品健康科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

応用生命化学専門教育コースでは、主に食品の健康機能の研究をしています。
食品には5大栄養素として、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養機能がありますが、それだけではなく体の健康を維持する特別な機能、すなわち保健機能もあります。これらの機能が培養細胞や実験動物、さらにはヒトでも効果があるのかについて、医学の先生方と共に生命化学の研究手法を駆使して、効果が実感できる機能性食品の開発をめざしています。食と健康の関係に興味のある人は、ぜひ機能性食品の研究をめざしてほしいと思います。

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