古くて新しい究極のものづくり、ロケット打ち上げ
宇宙輸送でできること
宇宙と定義されているのは高度100km以上です。地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)が高度約400kmで、そこへ物資を運搬するのも、月まで運搬するのも、広い意味で「宇宙輸送」と呼びます。高度100kmぐらいの低いエリアでも、宇宙輸送の需要はあります。小型の無人ロケットを打ち上げて、数分間の無重力空間滞在中に、地上では不可能な実験が行えるのです。例えば、宇宙から飛んで来る宇宙線を大気に邪魔されず観測すること、オゾン層など、高高度の大気のメカニズムを調べることなどがあります。観光などの需要もあり、まだまだ高価な費用がかかりますが、ちょっと宇宙まで、という実用化の時代に入っています。
ロケットの開発は安全第一で
そんな宇宙輸送のためのロケットに使う技術は、実はいわゆる最先端技術ではありません。安全優先のため、航空宇宙業界で使われるのは、30~40年を経て実証された成熟した技術なのです。新しい技術ほどリスクが大きいという考え方で、古典的なエンジニアリングといえるでしょう。しかし、ロケットに関する新しい技術を開発することは必須なので、秀逸なアイデアが形になれば、宇宙開発は躍進できるのです。
ロケットはキンキンに冷やして打ち上げ
日本のロケット開発は技術的に世界の最前線を走っています。それでも、プロジェクトの立ち上げから打ち上げまで10年もの工程を要します。燃料は灯油に近いジェット燃料や、液体水素が用いられます。液体水素はマイナス250度で保存しなければならない高価な燃料で、温度が上がると蒸発してしまうやっかいな性質があります。そのため、打ち上げ時には前もって8時間ほどもかけて、ロケット本体と燃料を送る長い配管を同じ温度に冷やす必要があります。打ち上げそのものは秒単位でコントロールしなければならないこともあるので、手前の準備作業の時間を短縮する方法を世界中が模索してきました。配管内に特殊なコーティングを施して蒸発のロスを防ぐ技術が日本で研究開発されています。
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静岡大学 工学部 機械工学科 准教授 吹場 活佳 先生
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