医療や農業に役立つ「プラズマ」の力
物質は三態だけではない
物質には固体・液体・気体の3つの状態があり、これを物質の三態と呼びます。しかし、物質の状態はこの3つだけではありません。気体を構成する分子から電子が飛び出して自由に動き回る第4の状態があり、これを「プラズマ」と呼びます。雲と大地の間で放電が起きる雷は、高い電圧により電子が放たれたプラズマの状態です。プラズマが大気にぶつかると、大気中の窒素分子や酸素分子が刺激され、光を放ちます。太陽から吹き出す太陽風もプラズマで、これが大気に当たって発光したものがオーロラです。宇宙を構成する物質の99%はプラズマ状態だといわれていますから、物質の三態が見られる地球は、宇宙の中では特異な環境だといえるのです。
プラズマを医療に利用
プラズマは人工的にも作ることができ、照明器具に使われる蛍光灯などに利用されています。蛍光灯が光るのは、放電により内部の水銀がプラズマ状態になり発光するからです。以前はプラズマをコントロールできるのは真空中だけでしたが、近年では微小空間であったり、ガスを選べば大気圧中でも扱えるようになりました。
そこで、医療分野でプラズマをがん細胞に照射する治療が試されています。プラズマ照射は、物の表面を削り取ることができるほか、分子の再結合や殺菌も可能です。刺激により、がん細胞を正常な発育のサイクルに戻すこともできます。現在、がん治療は外科手術、放射線、薬剤、免疫療法により行われていますが、それらに次ぐ新たな方法として注目されています。
作物を育てるプラズマ
「雷の多い年は豊作になる」「雷が落ちた場所にキノコがよく育つ」といった言い伝えは日本各地にあります。雷はプラズマなので、雷が落ちることで化学反応が起きる、病気の作物が正常な状態になる、電気の刺激が作物の成長の起点になり収穫量が増えるなどの効果が考えられます。すでに農業分野でもプラズマを取り入れた栽培が行われています。プラズマの研究は、これからもさまざまな分野に生かされていくでしょう。
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東京都立大学 システムデザイン学部 電子情報システム工学科 教授 内田 諭 先生
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