地震だけじゃない! 東日本大震災から考える、津波防災について
地震に対して強い建物をつくってきた日本
これまで日本における防災は、地震被害に対応して考えられているものが大半でした。しかし近年では、津波や竜巻、河川氾濫や土砂災害などの被害も甚大になってきたため、これまでのように地震の研究だけでは成り立たなくなりました。地震以外の自然災害では、地震とは異なる壊れ方をします。地震が起こる際には被害が少ないとされる、軽い屋根は竜巻が来ると吹き飛ばされてしまったり、壁で囲われた建物は津波が来ると水に対する浮力で浮いて流されてしまったりすることなどがわかっています。
東日本大震災の津波は未曾有の規模
なかでも津波の研究は、東日本大震災を契機として本格的に取り組まれるようになりました。それまで津波では鉄筋コンクリート造の建物が壊れたことはほとんどなかったのですが、東日本大震災では4階建てのビルの杭が引き抜かれて転倒したり、水流で壁自体に大きな穴があいてしまったり、壁に当たった水が下の方で地面を掘って建物が傾いたりするなど、いろいろな壊れ方をしたために研究が進んだのです。
これらの被害状況を1つひとつのパターンに分けて分析し、壊れた建物と壊れない建物の境界を決めたあと、さまざまな先行研究を参考にしながら緊急時に一時的に避難できる津波避難ビルのガイドラインがつくられました。
さまざまな災害に強い建物をつくるために
また建物が津波によってどう崩壊するか、その被害予測についても実験を行っています。例えば、1階部分が柱だけで構成されるピロティ形式の建物は津波を受け流すには適した形状ですが、津波前の地震によって柱が損傷したり、漂流物が開口を塞いでしまうと津波によって建物が壊れやすくなることがわかりました。
さまざまな災害に対応するためには偏った知識だけでは対応しきれません。例えば建築構造の分野と海岸工学の分野の専門家が手を取り合うなど、今後は異分野の研究者と交流し、新しい防災技術を開発していくことが求められています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 建築学科 准教授 壁谷澤 寿一 先生
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