地球周辺の宇宙環境を保全せよ
限界にきている地球周辺の宇宙ゴミ問題
1957年に、旧ソビエト連邦が世界初の人工衛星「スプートニク」を打ち上げてから半世紀以上が経過しました。その間に打ち上げられて地球の周りを回っている人工衛星の多くは、すでに寿命を過ぎ「宇宙デブリ(宇宙ゴミ)」となっています。宇宙デブリには寿命を終えた人工衛星のほか、ロケットの2段目や人為的に破壊された人工衛星の破片などが含まれています。
人工衛星は太陽電池で発電し地球と通信を行いますが、姿勢を適切な方向に向けないと発電や通信が行えなくなり、設計寿命よりも早く宇宙デブリになってしまう危険があります。宇宙デブリを増やさないためには、人工衛星の寿命を長くし、打ち上げる個数を減らす必要があります。また、宇宙デブリが多く漂う軌道は、地球観測に適した太陽同期軌道と呼ばれ利用価値が高い軌道なので、宇宙デブリを除去することが求められています。
宇宙機の姿勢・軌道を効率よく制御する最適制御
人工衛星などの宇宙機の姿勢を希望の方向に向けたり、軌道を維持・変化させたりする際、使用する燃料が少ない方が長寿命化に、また短い時間で同じ動きが実現できれば時間短縮につながります。このように、できるだけ少ない燃料や時間で宇宙機に「希望の動きを実現する方法」の研究分野を「最適制御工学」と呼びます。
一部が壊れても大丈夫 1+1=3になる制御
宇宙機の姿勢を効率よく安定して制御するには、3つの軸まわりに制御する必要があり、通常は3個の姿勢制御アクチュエータが必要です。しかし、姿勢変化は単純な足し算では表せない非線形な形をしているので、実は2個の姿勢制御アクチュエータで3つの軸まわりの制御が可能なことがわかっており「劣駆動制御」と呼ばれています。このことは、アクチュエータの一部が故障しても、ミッション継続を可能とする制御ができ、宇宙デブリになるのを防げることを意味します。このようなアクチュエータの一部が故障しても機能を損なわないようにするための制御方法の研究も行なわれています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 小島 広久 先生
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