人間を超える2足歩行の人型ロボットは誕生するか
脳を用いた高次の歩行制御
人とロボットの歩行の違いはどこにあるのでしょうか? 歩行中に急な障害物を回避したり、大きな加減速や進路変更を行うには、脳による制御が必要になります。目的の動作を行うために次の脚をどのタイミングでどこに着けばよいか、またどの程度の力で地面をけるかなどの判断は、主に小脳や大脳基底核が行います。私たちは幼少期に歩く練習を繰り返す中で、歩行中のさまざまな状況に対応した脚の使い方を学習し、脳内に安定化制御のためのフィードバック回路を作り上げていると考えられます。
高速計算によるロボットの歩行
一方、人型ロボットの多くは、コンピュータで厳密に計算された軌道を追従するようにアクチュエータを動かすことで歩行を行います。具体的にはロボットの位置と、床から受ける力の関係を表す運動方程式を数値的に解き、歩行に必要となるアクチュエータの出力を求めます。これを数ミリ秒毎に計算し直すことで、転倒しない歩行を実現させています。現在ロボットの歩行は人より劣りますが、計算機やアクチュエータ、センサの高性能化を考えると、将来的には人の歩行能力を追い抜く可能性を秘めています。
人型ロボットへの期待と懸念
震災にともなう原発事故を機に、災害救助、極限作業用として人型ロボットの有用性が見直されています。また少子高齢化の進む日本では介護や家事支援の需要も高まり、今後私たちの生活の場にロボットが入り込んでくるでしょう。しかし、人の運動能力を超えるロボットの実現には一抹の不安を感じるのも事実です。例えば人は時速30km程度で走ることができますが、今後それ以上の速度で走る人型ロボットが開発されるかもしれません。そのようなロボットが街なかを走る姿を想像すると、少なからず違和感を覚えます。これまで人の運動能力を超えるロボットはSFの中だけの話と考えられてきましたが、近い将来実現される可能性は少なくありません。その際、ロボットをいかに活用、または制限していくかについて、社会全体で考えていく必要がありそうです。
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