野菜やネズミも擬人化! 絵巻から読み解く日本
絵巻からわかる日本の食生活や習慣
絵巻は美しいだけでなく、当時の食生活や文化、習慣など、さまざまな日本の姿が描かれています。例えば室町や江戸時代の絵巻からは、干しアユやちまき、コイ、カモ、ヒラタケといった多様な食材があったことがわかります。タヌキやガン、キジ、ツルなどは超豪華な食材で、天皇や将軍のための料理であることもわかります。
また、調理しているのは男性です。宣教師のルイス・フロイスは、戦国時代に日本に滞在し、『ヨーロッパ文化と日本文化』を執筆しています。その中で、「地位が高い人は、厨房(ちゅうぼう)に行くことを誇りに思っている」と記すほど、ヨーロッパの人にとっては驚きの文化だったようです。
物事をパロディー化して楽しく伝える
絵巻には、ネズミの調理人や、ボタンなど花の貴婦人、カブなどの野菜や樹木が人のように描かれたものもたくさんあります。史料などで調べると、五穀豊穣や宗教観を描いていて、当時の人々の願いや思いを読み解くことができます。そうした絵は、もとは中国やアジアで描かれていたもので、人物が真面目に描写されていました。ところが、日本に伝わって描かれると、パロディー化、キャラクター化されて、おもしろく、かわいらしく描かれるのです。
お寺に行くことが娯楽になっていたことや、仏教の教えを庶民にわかりやすく伝えようという意図もはたらいています。また、長く続いた江戸時代には、冗談めかすことで幕府からの規制がかからないよう工夫したとも考えられます。
まったく新しい日本が見えてくる
絵巻から日本を読み解く研究はまだ少ないのですが、だからこそ、まったく新しい日本が見えてきます。関連史料と合わせて検証することで、当時の日本の社会情勢のほか、近隣諸国との関わり、ヨーロッパからの影響といった文化の流れも見えてきます。
日本の美術品や文化は、海外で非常に関心の高い分野です。日本を深く理解する学びは、現在のグローバル社会においても大いに役立つことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 外国語学部 国際教養学科 ※2024年4月開設 教授 伊藤 信博 先生
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