ベアリングに「プラスチック」を使用する理由

ベアリングに「プラスチック」を使用する理由

環境によってベアリングの材料を変える

ベアリングは、回転を支持することで動力を伝える重要な部品です。ベアリングの材料というと多くの人が鉄鋼材料を想像するでしょう。これは、強度と耐久性が必要とされるからです。しかし、鉄鋼材料に不向きな環境もあります。例えば、半導体製造工場は大量の水や薬品が使用されるため、サビが発生し強度が低下してしまいます。この問題を解決するのが、スーパープラスチックと呼ばれる熱に強く、強度のあるプラスチックです。

樹脂の弱点を機械構造として解決

しかし、そうは言ってもプラスチックは高温に触れれば溶けますし、強度は鋼材の10分の1程度しかないため、鋼材と同じように使用することはできません。そこで部品全体の構造を工夫して材料の弱点を解決することが要求されます。例えばボールベアリングには、荷重を支持するボールとそれが飛んでいかないように抑える保持器という部品があります。この保持器の構造を工夫して熱が伝わらないようにすることで、軸受全体の寿命を向上させることができます。このように、実用化に際しては、材料そのものの研究だけでなく、機械構造全体としての技術開発が求められます。

「プラスチック」ベアリングのメリット

プラスチックベアリングを開発していく中で、サビが発生しないことのほかに、別のメリットも見つかってきました。ボールが回転する中で保持器の材料が削れ、接触面に摩耗粉が張り付くのです。これは接触面の摩擦を小さくする効果があります。鋼のベアリングの場合は摩擦低減のために常に油を補給する必要がありますが、これをうまく使うことでメンテナンスフリーのベアリングができるかもしれません。また、電気自動車などに使用される高出力のモーターでは、鋼のベアリングを使うと磁場の流れを乱してしまう問題がありますが、プラスチックではその問題を避けることができます。さまざまなメリットがあることから、この研究は今後ますます重要になっていきます。

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富山大学 工学部 工学科 機械工学コース 准教授 溝部 浩志郎 先生

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機械工学の面白さはなんでも自分でできなければならないということにあります。私は樹脂軸受の研究をしていますが、軸受の破壊を理解するためには、力学について知識が必要ですし、高分子である樹脂を理解するためには化学の知識が必要です。実験しようと思えば装置の設計のために製図の知識が必要ですし、装置を動かそうと思えば電気配線やプログラミングについての知識が必要です。専門を持ちながらもなんでもできるエンジニアとして成長できることが機械工学の面白さであり、強みでもあります。

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