卓球ロボットの開発から、人に役立つロボットが見えてくる
高度なスポーツをこなすロボットの開発
「卓球」は、相手の動きからボールの軌道を予測して、狙った場所に素早く打ち返すことが求められる高度なスポーツであり、人間の器用さの象徴とも言えます。卓球ができるロボットを研究することは、人間の器用さの解明はもちろんのこと、日常生活のさまざまなシーンで役立つロボットの実現にもつながるのです。
わずか0.1秒で動作を計算
卓球ロボットの動作は「(1)球の認識」「(2)軌道の予測」「(3)打ち返し方法の決定」「(4)ロボット動作の計画」の4つの「要素技術」から構成されます。(1)まずは相手が打った球の速度や回転をカメラで計測します。(2)次に、計測した速度を利用して、空気抵抗やテーブルとの跳ね返りを計算して球の軌道を予測します。すると球の到着時刻、打ち返し直前の球の速度が分かるので、(3)狙った場所への打ち返しの仕方として、ラケットの角度と速度を計算します。(4)最後に、計算したラケットの角度と速度で打ち返すためのロボットアームの効率的な動かし方を計算します。ロボットはこの4つの要素技術の計算後に実際の動きに入りますが、打ち返すまでに0.5秒は必要となります。ラリーは0.6秒ほどですので、4つのプロセスをわずか0.1秒で高速に実行することで、人間とのラリーが可能となるのです。
瞬時の状況判断と最適な行動を選択する能力
現在、自動運転の乗り物や案内ロボットなど、生活に役立つさまざまなロボットが開発されています。それらが人間社会に出るにあたって大事なことは、人を傷つけないことです。子どもが急に飛び出してきたり、なにかモノが飛んできたりした場合でも、瞬時に状況を判断して、人を傷つけることなく最適な対応をすることがロボットには求められます。これらは、卓球ボールを人やモノに置き換えることで同じ状況となり、卓球ロボットの「要素技術」を応用することができます。卓球ロボットの開発で培われた技術は、人間の役に立つ安全なロボットの実現につながっていくのです。
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南山大学 理工学部 機械システム工学科 教授 中島 明 先生
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