講義No.09738 機械工学

工作機械を精密に動かすために必要な技術とは?

工作機械を精密に動かすために必要な技術とは?

人の意図を実現する工作機械

工作機械とはその名の通り、ものをつくるための機械です。設計者は「CAD」を使ってコンピュータ上で設計し、製造者はそのデータを「CAM」を通して工作機械に伝えます。つまり工作機械には、設計者の意図を正しく受け取り、忠実に高精度で製作することが求められます。近年はこのことを機械工学と電子工学を合わせて「メカトロニクス」という言い方もします。ただし最新の機械であっても思い通りに動くわけではありません。作業のスピードや効率性の追求も大切ですが、実は「機械を思った通りに動かす」ことも追求され続けている課題なのです。

機械は言うことを聞かない

実は、機械は案外言うことを聞いてくれません。現実の物質を扱うわけですから、そこには摩擦、磁力、温度、また材料自体の伸び縮みなどさまざま要素がからみ、意外なところで誤差が生じます。例えば、スマートフォンに使われるレンズのような精密部品をつくるには、10万分の1ミリ以下の誤差が要求されます。しかし機械にこれをつくらせるには、実際には100万分の1ミリ以下の誤差くらいで想定しなければ部品製作時の誤差を吸収できずに失敗するのです。

ものづくりに残された日本の強み

かつては「ものづくり」で世界最先端を走った日本ですが、最近は白物家電や携帯電話などは中国や韓国に追い抜かれてしまいました。今も日本が優位にあるとされるのは工作機械と自動車くらいでしょう。ではなぜ、日本の工作機械が優秀なのでしょうか。それが「いかに思い通りに動かせるか」という部分です。機械はきちんと人の手を入れると途端に良い動きをするものなのです。例えば機械に、ある鋼材を90度に削れと指示します。しかし機械が部品を正確に90度に削ってくれる保証はありません。1つひとつの部品の動きを厳しくチェックし、誤差を調整して失敗となる要因を吸収する、いわば「機械を教育する」技術を持つ点で、日本メーカーには一日の長があるのです。

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金沢工業大学 工学部 機械工学科 ※2025年設置構想中 教授 森本 喜隆 先生

金沢工業大学 工学部 機械工学科 ※2025年設置構想中 教授 森本 喜隆 先生

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メッセージ

新しい研究テーマを考えるのは大変です。私は四六時中ずっと考えているといっても過言ではありません。しかし考え抜いてテーマができれば、もう研究の半分くらいは達成できたようなものです。
高校時代を思い出してみても、現在の研究に必要不可欠な数学は苦手でした。しかし問題が解けないのがくやしくて、解けるまで徹夜することもありました。振り返ってみると、苦手とはいえ考えることは苦痛ではなく、決して嫌いではなかったのかなと思います。何につけてもすぐに答えを求めず、まずはとことん考え抜いてみることが大事です。

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金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。