工作機械を精密に動かすために必要な技術とは?
人の意図を実現する工作機械
工作機械とはその名の通り、ものをつくるための機械です。設計者は「CAD」を使ってコンピュータ上で設計し、製造者はそのデータを「CAM」を通して工作機械に伝えます。つまり工作機械には、設計者の意図を正しく受け取り、忠実に高精度で製作することが求められます。近年はこのことを機械工学と電子工学を合わせて「メカトロニクス」という言い方もします。ただし最新の機械であっても思い通りに動くわけではありません。作業のスピードや効率性の追求も大切ですが、実は「機械を思った通りに動かす」ことも追求され続けている課題なのです。
機械は言うことを聞かない
実は、機械は案外言うことを聞いてくれません。現実の物質を扱うわけですから、そこには摩擦、磁力、温度、また材料自体の伸び縮みなどさまざま要素がからみ、意外なところで誤差が生じます。例えば、スマートフォンに使われるレンズのような精密部品をつくるには、10万分の1ミリ以下の誤差が要求されます。しかし機械にこれをつくらせるには、実際には100万分の1ミリ以下の誤差くらいで想定しなければ部品製作時の誤差を吸収できずに失敗するのです。
ものづくりに残された日本の強み
かつては「ものづくり」で世界最先端を走った日本ですが、最近は白物家電や携帯電話などは中国や韓国に追い抜かれてしまいました。今も日本が優位にあるとされるのは工作機械と自動車くらいでしょう。ではなぜ、日本の工作機械が優秀なのでしょうか。それが「いかに思い通りに動かせるか」という部分です。機械はきちんと人の手を入れると途端に良い動きをするものなのです。例えば機械に、ある鋼材を90度に削れと指示します。しかし機械が部品を正確に90度に削ってくれる保証はありません。1つひとつの部品の動きを厳しくチェックし、誤差を調整して失敗となる要因を吸収する、いわば「機械を教育する」技術を持つ点で、日本メーカーには一日の長があるのです。
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先生情報 / 大学情報
金沢工業大学 工学部 機械工学科 ※2025年4月開設 教授 森本 喜隆 先生
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