人が主役のコンパクトシティ 世界が重視する「歩く」まちづくり
自動車中心のまちとして戦後復興を遂げた富山
富山市は第二次世界大戦で最も大きな被害を受けた地方都市のひとつです。アメリカでは1920年代から始まっていたモータリゼーションは、日本では戦後の高度経済成長期に重なり、多くの地方都市では、戦災からの復興に際し、自動車の増加に対応するために近代都市計画が進められました。しかし現在、アメリカを含む世界の都市は行きすぎた自動車中心を反省し、徒歩、自転車、公共交通を重視する都市へと大きく変わってきています。
これからの時代、まちの主役は「人」へ
20世紀の都市は自動車中心でしたが、21世紀には、自動車から生身の人間へと主役がシフトしています。富山市は国内では最も早く、人口減少と高齢化の時代に対応するため、2000年頃から公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを掲げてきました。全国に先駆けて次世代型の路面電車を新規開業し、道路を廃止してつくった賑わい広場の前に駅が新設されました。
家を出てすぐ自動車に乗って目的地に行って帰るという、歩く機会の乏しい生活から、公共交通を利用して街に出かけ、まちなかを歩く生活に変われば、新たな経済活動も生まれます。住民が歩いて行ける駅周辺が、人が集まる広場の機能を発揮すれば、住民同士のコミュニケーションが生まれ、地域への愛着も湧くでしょう。コンパクトシティは自然的地域の保護や輸送エネルギーの利用など、環境の面からもメリットがあります。
まちづくりに生活者の視点を取り戻す
20世紀の都市計画はスピードや効率を求めるあまり、生活者の視点が抜け落ちていました。戦後復興の時代において、経済合理性を優先したまちづくりは必然でしたが、今これからの時代には、20世紀の価値観でつくられた現在の地方都市は、そのままではフィットしなくなっています。自動車だけに頼らない「歩く」まちづくりを進めることで、健康的で豊かなライフスタイルを実現できます。持続可能な都市を目指して、時代の変化を見据えアップデートしていく柔軟なまちづくりが求められています。
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富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 准教授 髙栁 百合子 先生
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