「痛みは国民病?」痛みの科学とリハビリテーション
痛みは「国民病」なのか?
肩痛、腰痛などの日常的な痛みや、手術後の痛みに苦しんでいる人はたくさんいます。腰痛を例にみてみますと、日本国民の約1/3が腰痛持ちであり、年間総医療費は約800億円と言われています。また、腰痛があることで労働生産性が低下し、痛みにより活動量が低下することで健康も損ないます。日本国民として、「痛み」は重要な問題であると言えます。
痛みはどうして感じるのか?
怪我をしたり負担が生じると、侵害受容器という痛みのセンサーが活動します。その痛みの情報は脳へと伝えられることで、「痛い」と認識します。痛みに対して敏感な人もいれば、鈍感な人もいると思います。これは、人は痛みの感じ方の程度を調節する能力を持っているからです。人は痛みの情報を増やしたり、減らしたりしており、この程度は個人差があるため、人によって痛みの感じ方が異なるのです。近年では、電気刺激等を用いて、痛みを感じにくくさせる人の機能を活発にして、痛みを抑えようとする最先端の治療も試みられています。この技術は神経調節と呼ばれていて、医療工学に携わる専門家たちが、機械を開発しています。このようにリハビリテーション医学と工学の医工連携も重要なテーマになります。
痛みと心理の関係
痛みは心理とも深く関係しています。痛みの考え方、捉え方で痛みの程度が変わることが研究でわかっています。治療に対する「期待」や「思い込み」で痛みがおさまることをプラセボ鎮痛といい、不安や不信感で痛みが強くなることをノセボ効果といいます。臨床場面では、ノセボ効果をいかに生じさせないかが重要になり、患者さんに安心してもらい、信頼してもらうことが痛みの治療には不可欠になります。そのためには、知識や技術のみならず、高いコミュニケーション能力、高い人間性も必要になります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。