タンパク質をブロックのように操り、新しい材料をつくる

タンパク質をブロックのように操り、新しい材料をつくる

タンパク質で工学的ものづくり

生まれたてのタンパク質はぶらぶらしたひもの状態です。適切な環境下におくと、折りたたまれて、機能性のある物体へと変化します。こうした自発的な高次構造は、タンパク質を構成するアミノ酸の種類と配列によって決まっています。しかし、不適切な環境下におくと、タンパク質は分子間の相互作用によって集まり、その結果、強固な繊維状の物質になります。この物質がアミロイドです。アミロイドはアルツハイマー型認知症や狂牛病など、さまざまな病気の原因物質と考えられており、医学的に重要な研究対象となっています。工学的にも近年、アミロイドを新しいものづくりにつなげる研究が進められています。

光るアミロイドをつくる

タンパク質をブロックのようなパーツととらえて、きれいに並べ、新しい機能を持つ材料にできないか、というのがアイデアの出発点です。アミロイドはタンパク質ですが、高次構造が崩れて本来の機能が失われた状態です。そこで、アミロイドにほかの物質をくっつけることで新しい機能を持たせられるかという実験が行われました。タンパク質の持つ感応器を「のりしろ」ととらえて、そこにGFPという蛍光性のタンパク質を付けたのです。すると「光るアミロイド」が実現しました。付けた分子を切り離したり別の分子に置き換えたりすることを可能にするために、「のり」には酵素が使われました。

環境にも優しい材料を

現在はアミロイドに何がくっつけられるかを試している段階で、アミロイドからどのような材料がつくり出せるのか、まだわかっていません。ただ、アミロイドを光らせ可視化できることで、まだあまり知られていないアミロイドの成長や細胞内での動きを解明する上で役立つと考えられていますし、いろいろなタンパク質の研究にも応用がききます。
タンパク質由来の機能性高分子材料を生化学の手法を使って開発できれば、環境への負荷も少なく、社会的にも関心の高い問題の解決も進展していくでしょう。

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富山大学 工学部 工学科 応用化学コース 准教授 迫野 昌文 先生

富山大学 工学部 工学科 応用化学コース 准教授 迫野 昌文 先生

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生化学、タンパク質工学

メッセージ

工学部の化学では合成、分析、理論など、さまざまなアプローチの方法が学べます。化学に興味があるけど、将来のめざす先が決まっていないというあなたは、工学部の化学を選択肢に加えてみてはどうでしょうか。
私の専門はタンパク質工学ですが、研究室では生体分子に関わるテーマを広く扱っており、遺伝子を研究する学生もいます。「どうしてこうなるのか」という疑問を持つことが、新しい研究を生むベースとなります。生物の持つ高度な機能を化学の力でどこまで解明できるか、あなたの新しいアイデアを吹き込んでください。

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