細胞と生体材料を組み立てて生きた臓器を再現する!?

細胞と生体材料を組み立てて生きた臓器を再現する!?

工学技術で生きた人工臓器を作る時代

細胞と聞くと、生物の世界という印象が強いかもしれません。細胞の理解には生物の知識がもちろん必要ですが、細胞から生きた組織を「つくる」というのはものづくり分野の工学が得意とする内容です。例えば、現在では3Dプリンタを使用して人工の臓器が作れるまでに技術が進歩しています。合成樹脂の代わりに細胞や生体材料を用いて、3Dプリンタで立体的に組織や臓器を作っていくのです。工学的に組織や臓器を作る分野である「組織工学」とは、工学と医学が融合した医工学の分野の一つです。医学に工学の知識を加えることで、生きた臓器や生体組織を人工的に作り出せるようになります。

カタチをただ作るだけでは生存できない組織

3Dプリンタを使えばある程度本物に近い人工の臓器のカタチを作り出せます。しかし人工臓器を作る際は、細胞が生存できるような環境も作り上げる必要があります。例えば、大きい臓器は内部に栄養や酸素を巡らせる構造が必要になります。血管の代わりとなる構造を作り血液の通り道を作り、そして適切な条件下で培養をしなければ生存はできないのです。正常に機能する臓器を人工的に再現することはまだまだ難しいですが、0.1〜0.5 mmくらいの比較的小さいサイズであれば、正常に動く組織の再現が可能になってきています。

小さい組織を組み立てて臓器を治療

現在、組織工学で実用化されている技術として「細胞シート工学」があります。細胞を薄いシート状の組織に培養し、1枚1枚臓器の患部に貼りつけることで治療をします。この様に小さく薄い組織を部品(バイオパーツ)として、組織を組み立て、治療に役立てる研究が進んでいます。積み木やブロックを組み立てて立体物を作るのと同じコンセプトです。細胞や生体材料を使った人工臓器の本格的な実用化にはまだまだ時間がかかりますが、機械の人工臓器と違って電源の供給も必要なく、拒否反応も少ないなどさまざまなメリットがある人工臓器への期待は大きく、今後も研究は進められていくでしょう。

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富山大学 工学部 工学科 生命工学コース 助教 岩永 進太郎 先生

富山大学 工学部 工学科 生命工学コース 助教 岩永 進太郎 先生

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組織工学、再生医療、医工学

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メッセージ

高校生のうちはさまざまなことに視野を広げ、一生懸命に取り組んでください。自分が苦手とする分野でも、ちょっとずつでいいので触れて学んでみることで、数年先の可能性が広がっていくでしょう。どんな方面でもいいので、自分の可能性を潰さないよう、たくさんの方向に目を向けてほしいと思います。私も高校生の時は生物が苦手でしたが、今では組織工学という生物やバイオに深いつながりのある分野で研究をしています。工学の立場からケガや病気で困っている多くの人々を救える、とてもやり甲斐のある研究分野です。

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