野生植物の可能性を生かした品種改良で温暖化・食糧問題を解決へ
二酸化炭素だけではない温室効果ガス
地球温暖化の原因で最も知られているのは二酸化炭素です。しかし、温室効果ガスにはそれ以外のものもあります。例えば牛のゲップの主成分として知られるメタンガス。そして、亜酸化窒素(N₂O)です。亜酸化窒素がどこからやってくるのかというと、多くは食料を生産する畑からなのです。
肥料が環境汚染の原因に
窒素は植物の肥料のなかでもリン酸やカリウムと並んで主要なものです。窒素を与えると葉が大きくなるため、世界中で大量に使われています。
しかし、植物は与えられた窒素すべてを自分自身の成長に使うことはできません。例えば、小麦なら30%程度しか使えず、残りは無駄になります。使われずに土の中を流れて海に流れ出た窒素は、海水を富栄養化し赤潮を引き起こします。また、空気中に放出されるものもあります。これが温室効果ガスとなってしまうのです。亜酸化窒素は二酸化炭素の300倍もの強さの温室効果がある物質です。現在のところは量が二酸化炭素の300分の1ほどですから、地球温暖化に対しては二酸化炭素と同じくらいの比重を負っている物質であると言えます。人類は食糧を得るために、実は一方で地球環境に大きな負担をかけてきたのです。
窒素を効果的に使う植物ができたら
この問題を解決する方法は一つではありません。なるべく窒素を多く使わないで栽培するという方法や、植物そのものの力を借りる方法もあります。
小麦と同じイネ科の雑草に、ハマニンニクという植物があります。これは海岸近くの砂地によく生えているのですが、そのような場所で育つからか、わずかな肥料を効率よく使うことがわかってきました。
この特長をうまく小麦に持ち込み新しい品種にできれば、30%ではなく、70%ほどの窒素を使うことができるのではないかと期待されています。そうすれば無駄になる窒素の量をぐんと減らせます。このように、雑草のなかにも地球を救うカギになる遺伝子があるかもしれないのです。今後はこのような視点での植物遺伝子研究が、さらに進むでしょう。
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