酵素で食感をコントロールし、新しい食品や価値を創造する
酵素を活用して、新食感を生み出す
食品を食べた時に、おいしいと感じる要素はなんでしょう。食材の味や香り、彩りなどがありますが、食感もそのひとつです。歯ごたえや柔らかさ、ジューシーさ、喉ごしといったさまざまな食感があり、食のおいしさを演出しています。実は、食材の分子構造を変えることで、さまざまな食感をつくることができます。そのために利用するのが、酵素です。酵素は、生体で起きるタンパク質の化学反応に関わる分子であり、人間の体内や自然界に存在しています。酵素の化学反応を利用して、食品開発をするのです。例えば、高齢者向けの食品には、食べやすいよう、肉などの素材を柔らかくし、なめらかにすることが求められます。酵素を使えば、かみごたえや喉ごしもコントロールできます。
分子同士を結合して構造を変化させる
「トランスグルタミナーゼ」という酵素は、タンパク質の分子と分子を結合させて高分子化させる特性があります。分子量が大きくなるため、食感を変えることに適しています。豆腐のような食感のチーズ、湯のびしない麺、カリッとしたかまぼこ、冷めても柔らかいご飯などをつくることができます。分子同士を橋のようにつなぐことから、これを「架橋高分子化」といいます。その作用によって、ゼリーのようなゲル化、または乳化させることができます。ハムやソーセージ、カニカマなどは、酵素によって保水力を持たせているので、しっとりした食感を生み出しているのです。
食感をコントロールし、新しい食品をつくる
食品加工に使われる酵素は約80種類ほどあり、特性も多様です。例えば、高温を好む微生物が持つ「ラッカーゼ」という酵素は、高い温度でよく働く性質があります。またイカ墨に含まれる色素に関与している「チロシナーゼ」も活用できるかもしれません。新しい食品をつくるには、どの食材をどの酵素を使って、どのような食感にするのかという技術開発が必要です。これが、未来の食品の新たな価値を創り出すことにつながるのです。
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東京薬科大学 生命科学部 応用生命科学科 教授 熊澤 義之 先生
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